KokusaiTourist2007-07-10

女子大生の勇気と記者の良心にエール!
従軍慰安婦問題を学び発信する女子学生たちの活動が本に
2007年07月09日朝日夕刊から
 女子学生たちが従軍慰安婦問題について、ゼミで学び、韓国に足を運んで交流した体験を講演会で話し続けている。周囲から「就職に不利になる」と言われたこともある。でも、被害者のハルモニ(おばあさん)に会って「彼女が負った傷は消えていない。過去の話ではない」と思った。高校や市民団体に呼ばれ、講演会は昨年秋から17回を数えた。先月には活動記録をまとめた本も出版された。
 「自分たちと同じ年頃の女性がどんな目にあわされたのかを想像し、ショックで倒れた人もいました」。7日、京都市生涯学習施設で開かれた市民集会で、神戸女学院大学兵庫県西宮市)文学部4年の小谷直子さん(21)が語った。テーマは戦争の真実。「政治に興味がない私でも、何でこんなひどいことをされないといけないのかと。ひどい、悲しい、許せないと思うようになった」。約1時間、約100人を前にゼミで学んだことや、韓国での見聞を話した。
 小谷さんは同学部の石川康宏教授(50)のゼミに入っている。4年生は9人。当初は従軍慰安婦を「軍のお手伝いさん」と考えていた学生もいた。ドキュメンタリービデオを見たり、本を読んだりして学ぶ一方、従軍慰安婦の存在や強制を否定する意見も研究。日本軍の状況を学ぶため、靖国神社戦争博物館遊就館」も見学した。
学生のなかには親から「そんなことを勉強したら就職に不利になる」と反対された人もいた。
 昨年9月、ゼミの全員で韓国・ソウル近郊にある「ナヌム(分かち合い)の家」を訪ねた。元従軍慰安婦約10人が仏教関係者らの支援で共同生活していた。

 併設された日本軍慰安婦歴史館には軍が配給した避妊具や、女性が体を洗った金だらいが展示されていた。再現された狭くて暗い部屋に2〜3人ずつで入り、部屋を出た所でショックのあまり倒れた学生もいた。
 15歳で連行されたというハルモニの話を聴いた。毎日続いた暴行。ハルモニは日本政府に謝罪を求めながらも、「日韓の若い世代は仲良くしてほしい」と訴えた。
 ナヌムの家にある宿泊施設に泊まった。上野紗矢佳さん(21)は「日本の過去を責められるんじゃないか」と不安だったが、韓国を去る前日、ハルモニの一人が笑顔で握手を求めてきた。しわだらけの小さな手は力強かった。帰りのバスで、韓国訪問を単なる思い出にしないために何ができるか話し合った。
 ゼミの活動ぶりを聞いた高校から人権教育の授業に招かれるなど、これまでゼミの9人が計17回の講演をした。
 この春、田中丸佐代さん(22)は大手金融機関の面接を受けた。面接官から「ゼミで勉強した内容と、安倍首相の考えは違うが」と問われた。自分が学び、体験した考えに揺らぎはないと伝えて内定を得た。誠実に聞いてくれた面接官の態度が何よりうれしかった。
 慰安婦問題が米議会で取り上げられて米国で「申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と述べた安倍首相に、田中丸さんは違和感を覚えた。「米国の国会議員ではなく、あのおばあちゃんたちに謝るべきなのに」
 学生たちの活動ぶりをまとめた本は「『慰安婦』と心はひとつ 女子大生はたたかう」(かもがわ出版)。6月中旬に出版された。