『生きさせる思想』を読んで

KokusaiTourist2009-02-15

記憶の解析、生存の肯定 雨宮処凛小森陽一対談 新日本出版社 

 労働、雇用が破壊され、空前の経済危機の時、「構造改革」が中途半端、もっと規制緩和が必要、景気回復には国際競争力を!そのために法人税引き下げと消費税引き上げを!の声が無反省に未だに飛び交っています。
 政治は大混乱、その混乱を収拾すらできない政権政党!一方で、各地で新しい生存をかけたたたかい繰り広げられ、その成果の交流があり、いま、日本は生存の自由、労働の権利、平和のありかたを巡って人間の尊厳と憲法の権威をかけたせめぎ合いが日々激しく展開されています。
 そんな時、標記のすごいタイトルの本に出会い衝撃をうけ、人間として社会として当たり前の価値観をしっかり持ち新しい時代に向かう運動がこういう形で広がっていかなければと思い、僭越ながらそうだと思うところを私なりにまとめてみました。私たちも、ディーセントワーク&ライフをめざして声を上げ立ち上がろうとしていますが、理論的な根拠、実践的な方向を見いだした感がします。
(T.AMTSUOKA)


1.無条件の生存の肯定が今求められている。

  極限まで自由を犠牲にした果てにやっと生存が認められる今の状況はおかしい。
  「交換の道具」を持っているかどうかで値踏みされるもおかしい。誰かに「生きてていい」と許可される筋合いはない。
  自分を肯定して初めて声が出せ行動でき意思表示ができる。失うものは絶望以外何もない。

2.「自分に対するハードル」を下げることと「幸せのハードル」を下げることは違う。
  自分に対するハードルを下げて、自己否定、自己責任から自らを解放する。
  生きてるだけで幸せなどと思いこみ、同じハードルでも現実には幸せのハードルを下げて何とるか生きている。
  「幸せのハードル」を下げるのは内側からの生存のためのまっとうな要求を自己抑圧することになる。

3.恐怖と怒りは紙一重―道理ある怒りを
  自己否定、自己責任からの恐怖はより弱者への怒り、攻撃性に転化しやすい。
  恐怖から道理ある怒りへの転化には、因果関係を明確にする議論、仲間・組織が必要。
  80年以降の労働運動の変質、「浅間山荘事件」などによる失望から政治権力への抗議の言葉が失われた。
  企業・雇用構造の変化で受験競争が幻想構造になり自分を責める回路しかなくなった。

4.新しい運動を立て直す動きが必要

  資本と労働の対立を家族・親子の対立にすり替え、新自由主義は家族を利用している。
  市場での資本主義的交換原理が成り立たない家族関係に社会矛盾が凝縮している。
  新たな変革の方向としての具体的な運動のあり方に「無条件で生きさせろ」があるのではないか…。