バルト三国の旅その3 エストニア

KokusaiTourist2009-10-25

(by KEIKO OHMURA)

 ルンダーレ宮殿は"バルトのベルサイユ"ともいわれるバロック様式の宮殿で、現在は政府の公式レセプションに使われるとともに、博物館としても公開されている。ロシアの女帝アンナに愛され、貧しい貴族からクールランド大公にまで昇格したビロン公がアンナ女帝のために夏の宮殿として建設されたもので、内部はロココ調の装飾で埋め尽くされ、贅を尽くしたものになっている。
 ルンダーレ宮殿は、第2次世界大戦中、占領ソ連軍の司令部が置かれていたため、内部の傷みが激しかったが、1970年代から修復が開始された。ひとときタイムスリップした気分を味わう。宮殿からでるとバスの駐車場まで庭にリンゴの木が植えられており、皆でリンゴ狩りを始めることとなった。日本のリンゴに比べると小さく手のひらサイズだが、味はしっかりしていてちょうどいいおやつとなった。

エストニア
 翌日はエストニアへの移動が始まる。朝からガイドさんはエストニア人となり、運転手とはロシア語で話しが通じている。こちらでは誰もが3カ国語を話すのは普通らしい。国境はまたしても簡単に通過、トイレ休憩と両替のために一休み。そこからもう少し走ると‘太陽の町パルヌ’へ到着する。
 夏場はヨーロッパの各国からバカンスに訪れる人が多いというパルヌは季節外れなので、人はまばら、泥風呂が古くから有名で現在はリゾートホテルが海岸のそばに建っていて観光客に人気らしい。昼食はこの町の中にある20世紀初頭にドイツのお金持ちの商人が娘のウエディングのために建てたといわれているクラッシックなホテルでいただいた。超がつくほどのスローテンポで前菜、メイン、デザートまでたっぷり2時間以上かかったが、盛りつけはとても創作的で味も素晴らしいものであった。
 その後、唯一残る17世紀の城門「タリン門」や、騎士団時代から残っている城壁の塔「レッドタワー」など見学し、バスをタリンまで進める。
 今夜の宿はタリンの旧市街の中にあり石畳の保存のため、大型バスの規制がありホテルまではタクシーを分乗して向かう。ホテルはロシア風でモダンな内装で今までのホテルとは全く違ったインテリアであるが、部屋の中はとても機能的。夕食は徒歩ですぐのレストランでサーモンを味わう。
 旧市街の中にいると時代を錯覚してしまいそうになる。旧市街の中はお洒落なレストランやバーが多く、観光客でとても賑わっている。お土産屋さんもたくさんあるが、夜遅くまでは営業していない。旧市街の周りは近代的な町やフィンランドまでの船が停泊する港もすぐ近くにある。
 食後、何人かでショッピングセンターとスーパー、ホテルが1つになった建物まで散歩する。どこの町でもスーパーは見ていても楽しく、買い物かごを片手に思い思いの品定めをしながら買い物を楽しむ。ショッピングセンターのトイレは有料でした。帰り道に雨が降り出し、急ぎ足でホテルまで戻る。部屋の窓からは教会の高い塔が見え、異国情緒に浸る。
 翌朝は最初は曇り、後に雨と風、そして晴れ間ものぞくという何でもありの天気の中、午前中は旧市街の観光を徒歩で楽しむ。リトアニア、ラトヴィアの旧市街とはまた違う町並みで、中世の店が息づいていて、映画「ハリーポッタ」にでてきた現存する薬屋さんがあったり、井戸が残っていたりロシア正教教会も美しい状態で残っている。
ちょうど日曜日の午前だったのでミサを見ることができた。キリスト教の教会ももちろんいくつもある。旧市街は大聖堂や城のある山の手と商人や職人が住んでいた下町に分かれ簡単に行き来できないよう城壁と門が残っている。山の手の展望台からはバルト海が望め、素晴らしい景観が広がっている。散策して買い物が楽しいのはやはり今も下町である。
 その後、ピョートル大帝がエカテリーナ妃のために離宮と公園を造らせた「カドリオルク宮殿」を見学する。こじんまりとした宮殿で現在は美術館として公開されている。

昼食後は5年に一度の祭典、ユネスコ世界遺産にも指定されているタリンの歌と踊りの祭典が催される「歌の原」へ行く。ここに当時の人口の3分の1もの人々が集まったといわれている。そこからバスで走ること20分でエストニア野外博物館に到着する。ここは日本でいう明治村のような施設で昔の農家の人々の生活が茅葺き屋根の家などが移築され紹介されている。
 最後の晩餐は天皇が訪れたときに食べられたものと同じメニューを同じレストラン兼ホテルで食した。一人一人に日本語の本日のメニューが用意されていて、丁寧な応対の中ゆっくりと夕食を楽しんだ。さすがにマッシュドポテトもトリュフ入りの贅沢な一品、ほとんどの皆さんが全て完食という快挙。何もかも上品で美味でした。
 最終日は出発まで午前中はフリーで、最後の買い物を楽しむ方、ホテルでゆっくり過ごす方など思い思いの時間を過ごす。フィンランドまでは50分の距離であっという間に着く。フィンランドからの帰りの飛行機は日本人がほとんどで、結構混んでいた。
 あっという間の8日間で3カ国を効率よく廻ったが、それぞれの国の歴史も当然違い長い間の占領時代もようやく終え、独立してからまだ10数年でこれからも発展していく最中に金融危機であっという間に不況に陥ったらしい。またロシアから天然ガスのパイプも通っていてライフラインがコントロールされかねない状況にもある。世界の不安定な状況がここでも目の当たりにした8日間であった。しかし、他のヨーロッパの国々とは違った魅力的な町がそれぞれにあり、何度でも訪れたくなるところでもある。是非訪れてほしい国である。