KokusaiTourist2010-01-31

(労協webマガジンより)
 「医療生協では、出資・利用・運営が原則で、利用者と職員が組合員となり、目的に賛同できる人々のネットワークづくりを進めている。協同労働の協同組合とはどう違うのか」という質問が寄せられました。協同労働法制化市民会議副会長・島村博さんに答えてもらいました。


医療生協とはどう違うの…?
働く組合員が経営にも責任負うかどうか
地域医療発展にも協同労働法は大きな力


利用者が組合員
  医療生協は、生協法に基づいて設立されており、法で予定されている組合員は、サービスの利用者です 職員が組合員になっていても、それは、サービスの利用者としてであって、サービス、労働を提供する組合員としてではないのです。
  医療生協の職員の皆さんは自覚的・主体的に働いておられると思いますが、法的には、あくまでも雇用関係に立っており、普通の消費生協と変わりません。働く組合員が医療生協を設立し、経営に責任を負っているわけではないと思います。

地域も限定され
  一方、協同労働の協同組合法(案)では、利用組合員の意思を反映させるようにもしていますが、働く組合員が主になるように設計しています。
  たとえば、利用する組合員の数が、働く組合員の数を大きく上回っても、役員の5分の3以上は従事組合員であることとしています。
  また、地域の力を最大限に引き出し、活用するという点でも、生協法人と協同労働の協同組合法とではかなり違う点があります。
  例えば、夕張のように自治体が経営する病院がおかしくなって、地域に必要な病院を再建しようとなった時、協同労働の協同組合法では、その地域の住民の力と同時に、地域を越えたところからのサポートも得られるようにしています。全国どこに住んでいる人にでも出資してもらえるようにしているのです。
 生協法人にもとづく医療法人では、地域が決まっており、それはできないわけです。おそらく、医療生協の職員のみなさんがそうした壁を一番実感されているのだと思います。ですから、協同労働の協同組合法は、医療生協で働く方々が望むような医療を実現し、地域医療を発展させる大きな力にもなりうると思っています。

フランスの例
 それが確かだということは、02年にフランスを訪問した際、実感しました。ヨーロッパの社会的協同組合は、5種類の組合員を想定しています。
  1働く組合員−医者、看護師、職員すべて、2ボランティアの働き手、3医療・福祉サービスの利用者、4法人を抱えている地方自治体、地域の団体−町内会、自治会など組合の事業に出資などにより協力する団体、5個人としての出資者。
  この5つのうち、1と3、つまり、働く人と利用者は必ずいなければならない。残り3つのうち1つは必ず含めなければいけない、ということになっています。
  フランス労協連の理事長は、過疎地などの病院はこういう形で再編成し、存続をはかっている、こういう形でしか維持できない、と話していました。
  訪問した時は、法律が通ったばかりでまだ2つの社会的協同組合しかできていませんでしたが、いまは80〜90に増えているそうです。