観光庁、夏の旅行需要促進に向けて「仕掛け」を実施−東北3県中心に

WEB版業界紙トラベルビジョン5月23日(月)より転載

 観光庁は夏の旅行需要の促進をはかるため、福島、岩手、宮城の東北3県を中心に全国で需要喚起に向けた取り組みを実施していく方針だ。観光庁長官の溝畑宏氏は5月20日の定例会見で、「全国各地に夏に向けての仕掛けをしていく」とし、「特に風評被害にあっている福島は、テコ入れを早急にしたい」考えを示した。

 具体的には、6月に郡山で開催されるプロ野球の巨人−ヤクルト戦を活用し、福島の安全性をアピール。7月、8月には岩手、宮城でも需要喚起に向けた取り組みを実施する計画だ。溝畑氏は、夏の節電対策や、企業の夏の休暇の長期化、分散化の流れが観光促進につながるとの見通しかから「夏は観光業界にとってチャンス」と強調。「夏の回復に向けて、新しい長期滞在やエコ型ツアーを造成し、夏の新しい観光マーケットの開拓に向けて準備にかかってほしい」と、関係者に対し呼びかけも行っているという。

 同氏によると、ゴールデンウィーク(GW)は「全体的に旅行に行こうというムーブメントが起こった」ことから、予想以上の回復を見せたという観光庁がとりまとめたGWの動向の報告によると、日本旅行業協会(JATA)会員各社の国内旅行取扱は対前年比10%から40%減。九州や沖縄は順調だったが、東北地方全般は苦戦し、関東にも大きな影響があった。また、GWの観光関連施設の入込客数の状況は、中部は4.3%増、近畿8.3%増、中国9.0%増と前年を上回ったが、北海道は22.8%減、東北は41.6%減、関東は15.7%減と2桁減となった

 こうした西高東低の傾向が続くなか、溝畑氏は東北、関東地方の課題として続く余震や福島の原子力発電所に対する不安をあげる。余震については徐々に収まりつつあることから「夏に向けて懸念は弱まりつつあるのでは」との見通し。今後は「原発の復旧プロセスと、我々の営業がうまく軌道に乗れば飛躍的に回復するのではないか」と考えを述べた。