沖縄の怒り共有します

 沖縄タイムス社説から9月5日
2011年9月5日 09時15分 野田佳彦首相は、2日の就任会見で、外交・安全保障政策について「軸となるのは日米関係」だと語り、両国の関係を「より深化、発展させていく」ことを明らかにした。
 会見では、懸案である米軍普天間飛行場の移設問題には触れていない。
 玄葉光一郎外相は外交・安保分野の経験が乏しく、農政通の一川保夫防衛相は「安全保障の素人」を自認する。
 野田首相も玄葉外相も一川防衛相も、過去の経歴からして、沖縄の基地問題に詳しいとはいえない。その分、官僚への依存度が高くなるかもしれない。
 辺野古移設に固執する政府関係者の話を注意深く追っていると、彼らの考えの中に、二つの前提があるらしいことが分かる。
 その1。仲井真弘多知事はもともと県内移設に賛成しており、手を尽くして説得し、要望通りの振興策を示せば、翻意は十分可能である、という見方。仲井真知事に対するこうした期待感は、米国政府の中にもある。
 その2。人口密集地にある普天間飛行場を返還し、代替施設を辺野古に移設することは、事故の危険や騒音などの面で確実に負担軽減につながる、という見方だ。
 この二つの前提はそれ自体、疑問点が多いが、これに財政負担の問題を加味すると、辺野古移設への疑問はますます膨らむ。
 戦況を直視せず、都合の悪い情報は排除し、「かくあってほしい」という願望に基づいて机上で作戦を立案した戦中の大本営に似ているのだ。
 その1。仲井真知事は、県内移設に反対する民意に支えられ、県民大会でも慰霊の日の平和宣言でも、「辺野古ノー」の意思を明確に表明した。名護市も支持母体の自民党県連・公明党県本も県議会野党も、こぞって知事のこの姿勢を評価している。もはや後戻りはできない状況だ。
 その2。辺野古移設は、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に象徴されるように、代替施設建設というよりも、新たな機能を付与した新基地建設というべきである。
 那覇空港自衛隊機増強も計画されている中で、本島中央部に巨大な嘉手納基地を抱えたまま、辺野古に新基地を建設するということは、負担軽減に著しく反する。
 辺野古移設は、米軍統治以来基地の過重負担に苦しめられてきた沖縄にとっては「負担の軽減」ではなく「負担の恒久化」というしかない。
 米上院軍事委員会のレビン委員長らは、辺野古移設を「非現実的」だと指摘し、計画の見直しを提言した。財政事情が厳しいからだ。
 震災後の日本もゆとりはない。震災復興のための増税が取り沙汰され、それとは別に、社会保障制度を維持するための、消費税を想定した増税も検討されている。
 そんな折、負担軽減効果の乏しい辺野古移設のために巨額の税金を投入することが許されるのか。官僚任せにしては、普天間問題の解決はできない。国会はもっとチェック機能を発揮すべきである。