【県内除染】国の勝手を許すな

KokusaiTourist2011-10-08

地元紙“福島民報”(10月6日)より
 国の除染対策の中で最近「財政面で支援する」「費用の全額を補助する」といった表現を見聞きする。補正予算案や来年度予算案の編成作業が始まっており、財政措置を講じる上での行政用語であることは分かる。ただ、「支援」「補助」といった言葉を頻繁に使い、あたかも除染の責任と主体が地元にあり、国は援助する立場と錯覚させようとしているとしたら許されない佐藤雄平知事は先日の細野豪志環境相原発事故担当相との会談でこの点にくぎを刺した。当然だ。
 気になるのは言葉遣いにとどまらない。環境省は先月下旬から県内の除染についての考え方や各種試算を矢継ぎ早に出し始めた。国が直轄で取り組む範囲を警戒区域計画的避難区域に限定し、比較的放射線量が低い地域は財政支援の対象としないなど、地元の意向に添わない内容が少なくない。反発を受けて修正してはいるが、事前に地元と調整を図った形跡はうかがえない。自分たちの都合のいい流れをつくろうとしているのではないかと勘繰りたくなる
 中間貯蔵施設を県内に複数箇所設置する必要があるとした南川秀樹事務次官の発言も妙だ。細野大臣は今月中に施設設置に向けた工程表を公表するとしていた。その前に事務方トップの事務次官が口を滑らせたとは考えにくい。その場で東京電力福島第一原発事故に伴う放射性物質を含む廃棄物の総量についての試算まで明らかにしており、何らかの意図を持った発言と見るのが普通ではないか。
 南川次官は6月にも最終処分場を県内に整備する方針を突然、示し、物議を醸した。その後、菅直人前首相は県内に中間貯蔵施設を設置する考えを表明し、細野大臣は最終処分場にはしないとした。地元にとって深刻な数値とともに国の厳しい姿勢を見せ、反発がなければ突っ走る。不満が出れば、一歩引いたところで決着を図る−そんな政治的駆け引きのにおいがする
 国や与党の関係者から福島県原発事故対応で予算ばかり要求してくる。岩手や宮城に比べ『霞が関』の評判がよくない」との声が流れ始めた。一種の脅しのようにも聞こえる。除染のために多額の予算が必要になった原因は原発事故であり、県民が真に求めているのはお金ではなく原状回復だ。国が責任を自覚し、自分たちだけでは手に負えないから協力してほしいと誠意を持って説明すれば、県民は理解するだろう。被害者を厄介者扱いして事を進めるような流れをつくらせてはならない。(早川 正也)