【ステップ2完了】大丈夫か「収束宣言」

被災地地元紙福島民報より(12月17日) 
  東京電力福島第一原発事故の収束に向けた工程表「ステップ2」完了を宣言する。「冷温停止状態」が達成され、事故は収束した−。野田佳彦首相が16日発表した。
 「収束宣言」は現状からすれば、あまりに唐突で違和感を覚える。首相は「事故との闘いが全て終わるわけではない」としているものの、「ステップ2の年内完了」という日程を優先した対応になってはいないか。「事故収束」との政府見解が一人歩きし、安全対策や事故への関心を薄れさせる恐れはないのか
 原子炉の損傷具合や溶けた核燃料の現状は確認できていない。注水による温度変化や格納容器内の放射性物質の解析から推定するしかないという。放射性物質の外部放出も止まっていない。原子力安全委員会の班目春樹委員長は「炉の中の状態が分からず、何が起こるかきちんと予想することが難しい」と認める。
 炉建屋や使用済み燃料プールは水素爆発によって傷みが激しい。循環注水冷却システムも綱渡りの状態が続く。崩落や汚染物質漏えいの危険性が依然残る。安全・安心とは言い難い。炉内部の調査・測定や不測の事態に対応できる体制の確立が不可欠だ。
 冷温停止の状態だとしても、廃炉をはじめ放射性物質の除染や住民の健康管理、賠償などの難題が山積する
 廃炉は燃料の搬出・処理が最大の課題となる。政府と東電は、使用済み燃料を2年後、溶け落ちた燃料を10年以内に取り出し始めるとした。完了までは最長40年を要するとされ、事故に苦しむ県民には長すぎる時間だ
 「収束宣言」に伴い、政府は現在の規制区域を年内に見直す考えを示した。年間放射線量50ミリシーベルト以上を「帰還困難区域」、20ミリシーベルト以上50ミリシーベルト未満を「居住制限区域」、20ミリシーベルト未満を「避難指示解除準備区域」とする新たな3区分を想定する。
 生活環境の整った地域から順次、住民帰還を目指すという。線引き基準や手順を地元にしっかり説明してほしい。同時に、除染などを軸とする古里回復に向けた工程表を明示すべきだ。
 帰還困難区域では、土地や家屋などの買い上げや集団移転が検討される。帰還を願う住民の希望を断ち切る事態が待ち受ける。しこりや分断が生じないよう、政府は誠意を尽くさなければならない。
 まずは来春発足予定の原子力安全庁(仮称)による廃炉作業の進行管理や監視徹底、情報公開が基本となろう。首相の掲げる「福島の再生」はまだ遠い。(鞍田 炎)