大阪・橋下市長:ビラ配布激怒、労組に懲戒処分示唆 「言論統制」の指摘も

毎日新聞より
http://mainichi.jp/area/news/20120714ddf041010009000c.html

 大阪市環境局の労働組合が、家庭ごみの収集を民営化する方針への不安をつづったビラを配布したことに、橋下徹市長が激しい批判を繰り返している。「セーフティーネットが危ぶまれている」などのビラの内容に、橋下市長は「信用失墜行為だ」と懲戒処分をちらつかせ、ツイッターでも「バカ」という表現を使って労組を攻撃し続けている。公共サービスに関わる問題を外部で訴えることは許されないのか。専門家からは「行き過ぎた言論統制」との指摘も出ている。
 ビラを作成したのは、環境局職員らが加盟する「市従業員労働組合」など。今月上旬、業者を通じ市内で約60万枚を戸別配布した。ビラでは、高齢者や障害者を訪問し、家庭ごみを収集する市の事業を紹介。民営化した場合に、「市民と築いてきたセーフティーネットが危ぶまれている。市民の日常生活に大きく影響することが心配」などと記した。
 橋下市長は11日、市議会で「組織の一員が、経営方針について市民に訴えかけるのは絶対にあってはならない。内部で話すことだ」と批判。「民間の価値観に早くさらすべきだ」と民営化を前倒しすることまで示唆した。
 ビラを配布した労組の幹部は「我々も清掃事業に自負があり、思いを伝えたくて配布した。民営化反対が目的ではない」と困惑している。【原田啓之】

 ◇会社方針批判、民間では…処分無効の判決も

 「こういうバカなことをやるのは、市場にさらされない公務員労組だけ」--。橋下市長は公務員労組の特殊性を強調するが、民間でも労組が会社の方針に反対し、ビラを配布するケースは珍しくない。懲戒処分を巡って訴訟になる例もある。
 山陽新聞社岡山市)に勤務する労組幹部らが、「真実の報道を要求しよう」などと会社の方針を批判するビラを街頭でまいたとして懲戒解雇されたケースは、広島高裁岡山支部が68年、解雇を無効とした。判決は「企業が公共的性格を持つ場合、その方針は国民生活に影響を与える」と指摘し、ビラの内容が使用者に「抵抗的、暴露的」であっても「真実と信ずべき特段の事情があれば正当な組合活動」と判断した。
 一方、中国電力に勤める労組幹部らが「原発の社員は地元の魚は食べません」などと原発建設に反対する内容のビラを住民に配布し、減給などの懲戒処分を受けたケースでは、最高裁が92年、処分は有効とする原判決を支持。「配布によって企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなどの場合」には懲戒処分が許され、「表現の自由を不当に侵害するとはいえない」と指摘している。【藤田剛】