[2米兵暴行事件]我慢の限界を超えた

沖縄タイムス社説2012年10月18日 09時46分より
 沖縄本島中部で、帰宅途中の女性が、米海軍所属の上等水兵(23)と3等兵曹(23)から性的暴行を受け、沖縄署と県警捜査1課が2米兵を集団強姦(ごうかん)致傷の疑いで逮捕した。
女性に落ち度は全くない。女性の人権を踏みにじる悪質極まりない事件である。
 調べでは、2米兵は女性に片言の日本語で声を掛けた。女性が取り合わずに歩いていると、後ろから近づき首を羽交い締めにし、人けのない場所に引きずり込んで犯行に及んだという。
 2米兵は米テキサス州にある海軍航空基地に所属し、厚木基地(神奈川県)から14日に沖縄に入った。任務を終え、犯行当日の16日にグアムに出発することになっていた。
 事件に対し抗議する基地・軍隊を許さない行動する女たちの会=17日、県庁記者クラブ
 2米兵は民間ホテルに滞在し同日午前にチェックアウトする予定で、沖縄を離れる日を選んで犯行に及んだのではないかとの疑念が消えない。県警には捜査を徹底して明らかにしてもらいたい。
今年8月には本島南部の路上で米海兵隊による強制わいせつ致傷事件が起きたばかりである。森本敏防衛相は日米合同委員会を開く意向を示している。だが、沖縄からは、事件のたびに日米両政府が口にする「再発防止」「綱紀粛正」という言葉は、沖縄の怒りを収めるための政治的パフォーマンスにしかみえない
 なぜ、再発防止や綱紀粛正が実行されず、事件が繰り返されるのか。合同委ではそれこそを問うべきである。
 戦後67年がたったが、これほど長期間にわたって女性の人権が脅かされている地域が一体どこにあるだろうか。
 県警が県議会軍特委で明らかにしたところでは、復帰後だけに限っても米兵による強姦事件は未遂を含め昨年末までに127件に上る。あくまで統計上の数字である。1995年には米海兵隊ら3人による暴行事件が起き、県民総決起大会が開かれた。その後も女性を被害者とするおぞましい事件が後を絶たない。
 復帰前には「空にB52、海に原潜、陸に毒ガス。天が下に隠れ家もなし」と言われたが、基地の過重負担は基本的に変わっていない。「空にオスプレイ、陸に米兵犯罪」−それが復帰40年の現状だ。相変わらず軍事が優先され、住民の安全・安心がないがしろにされているのである。
 沖縄に米軍の専用施設の74%を押し込める矛盾が噴き出しているのだ。その場しのぎでは、もう立ちゆかないのは目に見えているのに、日米両政府とも負担軽減を求める沖縄の声を無視し続けている。
 2000年の沖縄サミットでクリントン米大統領は「米軍のフットプリント(足跡)を減らしていく」と演説した。負担や影響の軽減である。キャンベル国務次官補も同年、「一つのかごにあまりに多くの卵を入れすぎた」と、沖縄の過重負担を指摘する論文を発表している。
 だが、負担軽減策は実行されていない。日本政府が海兵隊の沖縄駐留を求め続けているからだ。もはや我慢の限界を超えた。日米両政府が目に見える負担軽減策を実行しない限り、マグマが噴き出すのは間違いない