「八重」に復興の思い重ね 大河スタート、会津の魅力随所に

福島県地元紙福島民報より
 会津弁、磐梯山猪苗代湖赤べこ、ならぬことはならぬ−。6日にスタートしたNHK大河ドラマ「八重の桜」は、会津の魅力が随所にちりばめられ、全国のお茶の間に放送された。会津若松市が催したパブリックビューイングに訪れた市民は「素晴らしい出来」「福島や会津の再生に必ずつながる」など称賛の声を寄せた。東日本大震災東京電力福島第一原発事故からの観光復興を目指す関係者は「多くの観光客をしっかりともてなす」と気を引き締めた。
 パブリックビューイングの会場となった會津稽古堂の多目的ホールでは、用意された160席で足りず、急きょ20席増やした。午後6時のBSプレミアムの放送時間に合わせ、カウントダウンを行って盛り上げた。
 ドラマは冒頭から迫力ある戦闘シーンが繰り広げられ、見応え十分。実直な会津の人々や八重と兄山本覚馬、藩主松平容保公との交流が描かれ、ハンカチで涙を拭う人もいた。終了すると、会場には拍手が響き渡った。
 室井照平市長は「感動した、の一言。会津薩長のどちらかを悪者にするのではなく、当時の日本が置かれていた苦しい実情を踏まえ、登場人物の思いをしっかりと描いている」と評価し、観光誘客への効果に期待した。
 旧友同士連れ立って訪れ、会場に1番乗りした同市社会福祉協議会長大橋寛一さん(76)と会社役員高森真六さん(76)は「賊軍の汚名をそそぐだけでなく、覚馬をはじめ会津が新時代を築く逸材を輩出したことを全国の人に知ってほしい」と今後の展開を楽しみにしていた。
 市内の東山温泉や飯盛山周辺の観光関係者らでつくる、いにしえ夢街道協議会長の稲生孝之さん(53)は「什の掟(じゅうのおきて)など会津の教育や文化がクローズアップされる」と話した。県外からの教育旅行は震災前の4分の1ほどにしか回復していない中、「会津の教えは今後、関心を持ってもらえるはず」と期待を込めた。
 家族で訪れた謹教小4年の鈴木千紗都さん(9つ)は幼少時の八重を「男っぽいところはあるけど、私よりしっかりしていた」と振り返り、「面白かった。毎週見たい」と笑顔で話した。
■県民称賛「斬新」「親しみ」
 白河市の社会教育団体「立教志塾」の副塾頭を務める人見光太郎さん(70)は「戊辰戦争を世界史の流れの中で捉えようとする斬新な視点に感心した」と評価した。
 今後は戊辰戦争最大の激戦地の一つとされる「白河口の戦い」が取り上げられる予定で、「会津方の名だたる将兵が命を落とし、死者1000人ともされる白河口の戦いがどう描かれるか、期待が一層高まった」と話した。
 福島市の会社役員高荒弘志さん(55)は、会津を中心に幕末の日本が臨場感あふれる映像で表現されていることに感動した様子。「美しい自然や『什の掟』が出てきたことに親しみを覚えた。最後まで見たい」と話した。
 戊辰戦争で官軍と戦った二本松藩の歴史などに興味を持つ二本松市の主婦鴫原由紀さん(31)は「砲術を詳しく描いていた。二本松藩で西洋式砲術を学んだ木村銃太郎や、教えを受けて勇敢に戦った二本松少年隊のことも取り上げてほしい」と要望した。
■「視点に共鳴」 同志社大校友会県支部長山下さん 
 八重の夫の新島襄が設立した同志社大の校友会県支部長を務める西郷村の山下勝弘さん(77)は「国が変革期に直面する中での戊辰戦争という視点に共鳴した。男性上位の社会の中で人間として生きようとする八重の生涯を、歴史の事実を見つめながらドラマを通して見守っていきたい」と感想を語った。