介護離職 防ぐために

毎日新聞22日付けから
労働者協同組合 国際ツーリストビューローで働きながら妻を介護する富田秀信の記事が掲載されています。
記事本文一部は要約させていただきました。

総務省によると、家族の介護や看護のために離職した人は、02〜07の5年間で計56.8万人に上る。共稼ぎ世帯や単身世帯が増加し家族形態が変化する一方で、高齢化も進み、仕事を持ちながら介護できる仕組みをどう整えるかが課題となっている。

仕事と両立「綱渡り」
京都市南区の会社員、富田秀信(62)さんは妻の千代野さん(65)と2人暮らし。千代野さんは17年前に心臓発作で突然倒れ、無酸素脳症による意識障害が残った。若年性認知症のような状態で、家族を判別できない。常に見守りが必要で、要介護度は最も重い5だ。それでも神戸市の旅行会社に勤める秀信さんは、遠距離通勤と介護を両立してきた。
 平日は起床とともに千代野さんの洗顔と着替えを済ませ、午前8時に自宅に来るヘルパーに引き継いで出社。千代野さんはヘルパーと朝食を食べ、日中はデイサービスで過ごし、夕方5時に帰宅する。秀信さんは午後3時に退社し、自宅で千代野さんを待つ。
 従業員11人の会社で社内の介護支援制度はない。だが会社の理解を得て、時短勤務や自宅から営業先への直行、直帰などで両立を維持してきた。さらに、千代野さんの状態を職場に隠さず報告し、理解を得る努力を続けた。同時にこの会社で働く意思があることを何度も伝えてきた。
 だが、工夫だけではカバーできない課題にも直面する。突然の出張が入れば介護の利用サービスが増え、介護保険の限度額を超えた費用を自己負担しなければならない。「両立は常に綱渡りの状態」を打ち明ける。

国の制度、利用進まず
 国の支援策には、家族の介護などを理由に年間で通算93日間、仕事を休める介護休業制度などがある。だが、11年度の介護休暇の取得率は0.14%と低い。また、みずほ情報総研の10年度調査では、介護中に仕事を辞めた人の7割が、当時の勤務先で継続して働きたい意向があった。
 立命館大の斎藤真緒准教授(39)=家族社会学=は11年、京都市の事業所に勤めながら介護経験のある101人を対象に実態調査した。複数回答でアンケートを実施したところ、介護が必要な時、「早退」で対応したのが、39人△「有給休暇」36人△「欠勤」35人−で、「介護休暇」を利用した人はわずか2人だった。
 斎藤准教授は「まだ企業は社員のニーズを十分把握できていない。介護ニーズは個人によって多様で、介護休暇だけでなく、在宅勤務や短時間勤務など多様な選択肢が必要」と指摘。「育児や介護などのケアが社会に認識され、生活と仕事とが両立できる『ワーク・ケア・ライフ・バランス』が可能な社会になることが必要」とする。
 
危機管理として
 介護離職を食い止めるため、独自の制度で仕事との両立支援に力を入れる企業も出始めている。
 法定日数を大幅に上回る介護休職や、深夜や休日勤務の軽減、介護退職した職員の再雇用制度などを設ける。派遣社員を対象に介護情報を交換する座談会を開催。24時間対応の相談窓口も設置。各部の社員でのワーキンググループを結成、介護制度や認知症の基礎知識などを学ぶ社内セミナーの開催、社内ネットで社員の介護体験を紹介する取り組みなど。
 一方、ある大手企業は家族介護を担う社員の推計値を独自に算出。08年は12人に1人の割合が、23年には5人に1人になるとの結果が。共稼ぎ社員や「単身世帯も増加傾向にあることも判明し、対策として、介護支援制度や社内外の相談窓口の紹介や、介護セミナーを実施している」。管理職の研修でも、部下の介護支援のケーススタディを導入。「離職者を出さないための両立支援対策は、会社の危機管理としても重要。どの企業にも必要になってくる」と言う。

「話しやすい環境を」
 兵庫県や連合兵庫、同県経営者協会でつくる「ひょうご仕事と生活センター」(神戸市)によると、要介護者のいる労働者のうち、「勤務先に何でも相談できる雰囲気がある」という人ほど、「将来介護に直面しても、就業を継続できると思う」と考える傾向があるという。同センターの藤島主任研究員(46)は「支援制度は利用されなければ意味がない。職場の理解が深まり、困りごとを話しやすい環境が整ってこそ制度が使え、介護と仕事の両立は可能になる」と語った。

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