初秋の気配の上州草津&伊香保温泉紀行

◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎宋 敏
 以前から是非行ってみたいと考えていましたが、なかなかその機会が得られず、この夏休みを利用して思い切って関東まで足をのばし“念願の草津伊香保温泉巡り”に行ってきました。

8月30日(金)
初日、朝は少しゆっくりとして9時頃の新幹線で新大阪から東京へ。
東京駅からは、初めて乗車するので楽しみにしていた上越新幹線の2階建て“たにがわ”で高崎まで、そして上越線経由渋川から吾妻線へ。吾妻線は山並みを縫うような単線で旅の味わいを徐々に感じていると、いよいよ長野原草津口へ。
車中で気にかけていた夕立のような激しい雨もあがり、1か月ほど前に改築された真新しい駅舎を眺めながら、路線バスで一路草津温泉バスターミナルへ。そして、ホテルからの迎えの車で今日の宿へ。草津温泉は、林羅山の日本三名泉(兵庫の有馬温泉、岐阜の下呂温泉)に数えられる日本を代表する名泉のひとつ。また、北西部には草津白根山などを有する上信越高原国立公園に位置しています。
草津温泉の泉質は基本的には酸性泉であり、その湯出量は毎分4000リットルの温泉が湧き出ています。
 半日ほどの移動の疲れを宿の温泉まんじゅうを頂きながら暫し休憩。“湯畑“の散策は夜のライトアップまでお預けにして、夕食前に早速宿の温泉に。
源泉かけ流しの湯につかり、「ああ、極楽、極楽」と思わず口に出したくなるような、ゆったりとした気分で温泉を楽しみました。上州牛の石焼きははじめとした夕食を楽しみ、早速借りていた“浴衣”に着替えましたが、何年か前に習った着方を思い出しながら少し時間をかけてなんとかさまになり、楽しみにしていた“湯畑”へ。
ライトアップされた湯畑は、いままでパンフレットや写真で見ていたものよりはるかに広大な泉源で目を見張るものでした。湯が滝のように溢れる場面もあり、白く立ち上る湯煙、漂う硫黄の香りが心地よく鼻をくすぐります。
最後の滝になって落ちる所では、湯量の多さを改めて感じ、ライトの影の部分や湯気でぼんやりする部分など、いろいろな角度からシャッターを押し続けました。また、泉源によっては硫黄泉なども見受けられ硫黄の匂いが街中に漂い、本当に温泉気分に浸れます。宿にもどり、また、温泉に浸かり、幸せな初日を終えました。

8月31日(土)
 家を出る時の天気予報では、やや気になる天気でしたが、日頃の心がけのお陰か?朝から快晴。早速朝日を浴びながら露天風呂でのんびり浸かり(♨マークは夕食前に1回、寝る前に1回、朝1回と意味だそうです)お肌もツルツルに。のんびりと朝食をいただき、また浴衣で朝の湯畑へ。昨晩とは大きく違いキラキラと輝く湯畑はまた異なる趣を醸しだしていました。次の“湯もみショー”(熱の湯)まで湯畑の周りを散策しながら、ぜいたくな“源泉かけ流しの足湯”で一休み。
草津名物のこのショーでは、草津節「草津よいとこ、一度はおいで」を聞きながら風情をあじわい、体験時間には、湯もみ板の使い方を教わりながらひとときの“湯もみ体験”をしました。
その後、お土産屋通りで温泉街の小店をぶらぶらと覗きながら、田舎煎餅を買ったり、温泉まんじゅうの無料サービスをいただだり、片岡鶴太郎美術館へ。絵画鑑賞はまた心落ち着くひと時でした。
さらに、西の河原温泉へ足をのばし、溶岩がごろごろ転がり広い河原の中ほどに至る所から温泉が湧きだし、湯気がもうもうとした光景はまるで雲上の世界です。
そして、“外湯巡り”の体験(へ)。草津町共同浴場“千代の湯源泉”は、こじんまりした脱衣場と温泉で、源泉に近い温度で数十秒しか浸かっていられないほどの熱さですが、湯上りには全身がすっきりした爽快感がなんともいえません。
その足で、内湯の“御座之湯”へ、ここは昔の湯治文化を再現させて最近建てられた目新しい湯場で湯畑源泉と万代源泉からの2種類のかけ流しの湯を楽しみました。湯畑温泉を見下ろす高台にある「光泉寺」に涼みがてらお参りして、ゆっくりと宿へ。夕食前は部屋でのんびりし、お食事処で上州麦豚のしゃぶしゃぶの会席料理を堪能しました。


9月1日(日)
 昨晩から気がかりな天候でしたが、今日も朝から快晴です。最高!
今朝も朝日のもと朝湯を露天風呂で十分に楽しんで、地元野菜をたっぷり使用した朝食をいただき、宿を後に。上信越高原国立公園の一部を占める“草津白根浅間高原”の定期観光バスで遊覧の旅へ向かいました。
この観光のひとつの目玉である“白根山湯釜見学”は、本白根山(標高2171m)の山頂付近まで30分あまり。山頂付近は白い山肌が広がっているが、山道の両側には低木の松や熊笹が茂り、その隙間から丁度見ごろの紫色のリンドウが可愛らしく咲いており、思わずシャッター。
遊歩道を登りつめると、誰もが思わず“ウァー、きれい!!”と声をあげてしまうほど素晴らしいエメラルドグリーンの火口湖“湯釜”が別世界の光景のように現れ、汗をかき、息を切らしながら登ってきた苦労もうどこかに。
その後、車窓から万座温泉を眺め、嬬恋牧場で搾りたての牛乳の濃厚なアイスクリームで喉を潤し、世界奇勝と言われ“鬼押出し園”で昼食&見学。この鬼押出し園は、230年ほど前の1783年(天明3年)におきた浅間山の噴火の際に流れ出た広大な溶岩群であり、上野の寛永寺の別院である浅間山観音堂が設置されている。200年以上前の噴火物でありながら今もなお、おおかたの植物を寄せつけず、低木の松などがまばらに生息する様に、自然の雄大さに改めて感動しました。
バスの旅の後半は、軽井沢(長野県)と北軽井沢(群馬県)を結ぶ白糸ハイランドウェイ沿いにある “白糸の滝”へ。森林に囲まれ湾曲した岩壁に数百条の地下水が白糸のように落ち、落差は3m、幅は70mほどですが、その広大さとひんやりとした清涼感は残暑を忘れさせてくれました。
最後は北軽井沢の“旧草軽電鉄駅舎”。スイスの高原鉄道に着想を得て、草津浅間山麓の高原への足として1914年以降順次路線を開通させ、1926年までに軽井沢まで延伸し、当時の沿線に近代文明をもたらした存在だったそうです。おもちゃの国にあるような木製の機関車から当時の繁栄を想像しながら、浅間酒造へ。梅酒など試飲の後、終点の長野原草津口へ。
長野原草津口から快速特急で渋川へ約1時間弱。渋川駅で路線バスに乗り換えようとホームに降りると、「SLみなかみ」蒸気機関車が私を待っているように停車中。“ラッキー!”思わずシャッター。
そして、渋川から路線バスで伊香保温泉バスターミナルまで、途中スコールのような土砂降りであとの天気を気にしながら30分あまり。バスターミナルへ着くころには、雨も上がり、宿の迎えの車が来るまで山々の景色を暫し観賞、夕暮れも真近い山々に囲まれた谷合に綿雲が漂っており、幻想的な気分でまたシャッターを。そして、今夜の宿へ到着。
 伊香保温泉は、千数百年前に発見され、万葉集にもその名が登場しています。現在の温泉街が形成されたのは戦国時代で、長篠の戦いで負傷した武田兵の療養所として整備され、名物の石段もこのときにできました。その後、明治時代に竹久夢二徳富蘆花夏目漱石など数多くの有名人が多く訪れています。急斜傾地に作られた石段は、365段ありこの温泉の一つのシンボル。両側には、温泉旅館、みやげ物屋、飲食店などが軒を連ねています。
今夜の宿には、2種類の源泉があり、“黄金の湯”は、硫酸塩泉でやや濁っており、肌にしっとりと馴染んでくれます。また、“白銀の湯”は、メタケイ酸単純泉でさらりとして体の芯から温まります。またまた、“あ〜極楽極楽”とゆったりと温泉を味わい、そして部屋でしばらくリラックス。今晩の夕食は、お部屋でのんびりと上州牛などの会席料理に舌づつみをうちました。

9月2日(月)
 いよいよ最終日。天気は小雨ながら明るさも。最後の温泉を露天風呂にゆっくりつかってから、のんびりと朝食をいただき、小雨の中、名物の365段の石段に挑戦へ。途中、石段街に埋め込まれている干支の十二支のプレートを合せて探しながら行くといつのまにか最上段へ。  
そこにひっそりと祀られた伊香保神社の境内でお参りしてから、両側の小店を覗きながら365段を下り、“竹久夢二伊香保記念館”までぶらり歩き。緑深い大正ロマンの森に囲まれた夢二記念館では、先ず入ってすぐ大正ロマンを耳から感じられるディスクオルゴール(ドイツやアメリカ製のシンフォニオンなど)の調べでその雰囲気に浸ります。
続いて夢二の代表作「黒船屋」をはじめ、数々の美人画、デザイン画 、水彩画、素描など、夢二の優しさが伝わる子供絵、ハッとするほど斬新なデザインなどなど幅広い作品などを展示しており、大正ロマンの雰囲気に癒されました。記念に夢二のハンカチとディスクオルゴールのCDをゲット。  
森の一角にある併設の上州蕎麦屋でお腹を満たして、名残惜しさを胸にいよいよ帰路のバスで高崎へ。高崎から上越新幹線東海道新幹線で一路現実の世界へ。

天候にもほぼ恵まれ、充実して心も身体の癒された楽しい温泉紀行でした!!