社説[政策協要請]一体、これは何なんだ

沖縄タイムスより2013年12月18日 06:00
 「県外移設」の文言がなく、口頭での県外要請もなかった。一体、どういうことなのか。これは単なる要請書ではなく、辺野古移設の受け入れ条件を網羅した文章ではないか。そうとしか受け取れないような内容だ。
 安倍晋三首相をはじめ全閣僚、仲井真弘多知事らが出席する沖縄政策協議会(主宰・菅義偉官房長官)が17日、首相官邸で開かれた。
 3月に開かれた政策協で仲井真知事は米軍普天間飛行場の県外移設を要請した。だが今回は、県外移設に言及せず、代わりに「普天間飛行場の5年以内運用停止、早期返還」という表現を盛り込んだ。オスプレイについても配備中止という従来の表現を使っていない。
 「オスプレイ12機程度を県外の拠点に配備」し、「訓練の過半を県外に移転」することや、「普天間飛行場運用停止後、県外移設」することなど、意味不明の体言止めの文言が並ぶ。「日米地位協定の条項の追加等、改定」との文言も分かりづらい。メモ風に急いでまとめ、推敲(すいこう)もせずに提出したような言葉遣いだ。
 唐突な開催といい不自然な内容といい、一体、何があったのか。誰が入れ知恵したのか。
 要請書は政策転換した自民党県連や官邸と水面下で調整したことをうかがわせる内容だ。
 これが受け入れ条件でないとすれば、一体、何なのか。知事は要請の趣旨と内容を早急に、自らの言葉で丁寧に県民に説明すべきだ。
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 要請の中身が受け入れ条件なのかとの記者団の質問に対し、知事は「直接は関係していない」と答えているが、本当にそうなのか。
 16日に上京した知事は沖縄振興予算が閣議決定される来週まで、ずっと東京に滞在する予定だという。腰痛が悪化したため東京で入院加療するということらしい。時期が時期だけにこれも疑念を生じさせる行動だ。
 入院中であっても体調が許す限り、県民への説明責任を果たすべきである。今回の要請はあまりにも唐突だ。
 県議会での答弁や記者会見での説明、公的な場での発言は、県民が知事の考えを知る数少ない機会である。
 政府と知事の水面下での話し合いが、「公式見解」とはまったく異なる方向に進んでいるとすれば、知事は言葉を使い分け、県民を欺いたことになる。
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 県の中でも、環境保全を重視する環境生活部と違って、公有水面埋め立てを所管する土木建築部は、手続きが適切だったかどうか、という形式面を重視しがちだ。だが、今回は米軍飛行場建設という極めて特殊な案件である。
 現行法に不備があるのは、オスプレイ配備という重要情報を後出ししたことや、名護市民・県民の声を完全に無視して埋め立て申請したことからも明らかだ。通常の公共事業では考えられないことである。
 そうである以上、手続きに不備があるかどうかだけを判断材料にすべきではない

社説[米国の恫喝]今が踏ん張りどころだ
沖縄タイムス2013年12月17日 06:00
 「民主主義の国」を返上した方がいい。沖縄を今なお軍事植民地としか見ない傲岸(ごうがん)不遜な態度というほかない。
 米軍普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への移設に向け日本政府が県に提出した埋め立て申請について、無条件で承認されるべきだとの認識を米政府高官が日本側に伝えてきた。共同通信が報じた。
 仲井真弘多知事が埋め立て申請の結論を今年中に出すと明言したタイミングを見計らって、無条件で承認を迫るあからさまな恫喝(どうかつ)である。
 米国は二重基準ダブルスタンダード)の国としかいいようがない。米海軍が米本国東部で計画していた訓練場が騒音の増加や生態系への悪影響を懸念した周辺住民や環境団体によって凍結に追い込まれたことが本紙の取材で明らかになったばかりである。
 普天間に強行配備したオスプレイは、米本国やハワイでは住民の反対や希少生物の生息環境に悪影響を与えるとして訓練を断念している。
 日本政府は普天間の県外移設を「とんでもない」(菅義偉官房長官)と言って恥じることがない。軍事一体化を推し進める日米両政府が沖縄の声を力ずくで封じ込め、普天間辺野古移設を強行しようとしているのである。
 仲井真知事は今が踏ん張りどころだ。沖縄タイムス社と琉球朝日放送(QAB)による世論調査では、7割の県民が「承認しない方がよい」と回答している。知事のバックには、辺野古移設に反対する圧倒的な民意が存在していることを忘れないでほしい
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 仲井真知事の発言は、当意即妙で歯切れがいい。
 辺野古移設が進まなければ普天間が固定化するとの「二者択一論」が政府内で出ていることに、「固定化の発想自体、一種の堕落だ。無能であり、その任に置くべきではない」と切り捨てている。
 県外移設を堅持し、埋め立て申請を不承認とするよう提言した県政与党の公明党県本部に対し「ほとんどの県民が賛成する内容だ。提言をベースにしながら結論を出せたらいい」と評価している。
 県議会9月定例会でも「これまで申し上げてきた流れに沿った脈絡で判断する」と県外移設の公約との整合性を重視する考えを示している。
 昨年7月には民主党政権森本敏防衛相との会談後、オスプレイの事故が起きた場合には「全基地即時閉鎖という動きにいかざるを得ない」と言い切っている。
 知事は米国でも、県主催のシンポなどを通して県外移設を主張。姿勢にぶれはない。
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 本土防衛のために「捨て石」にされ、多くの一般住民が犠牲になった沖縄戦は、戦後沖縄の原点である。仲井真知事は6月の全戦没者追悼式で、安倍晋三首相や駐日米国大使が参列する中、日米両政府に「一日も早い普天間飛行場の県外移設」を要求した。
 県外移設は、民主党政権だった2011年から平和宣言に盛り込むようになった。み霊の前で交わした約束は限りなく重い。誰よりも知事自身が知っているはずだ

宜野湾市長、普天間「県内」事実上容認

 【宜野湾】佐喜真淳宜野湾市長は17日、米軍普天間飛行場の移設先について、「固定化を避けるために、あらゆる可能性を排除しない」と述べ、事実上県内移設を容認した。同日、沖縄タイムスなどの取材に答えた。

 佐喜真氏は「今一番の問題は固定化だ」と強調。同日、市議会で移設先について言及せず県内移設を否定しなかった与党案が決議されたことについて「固定化が絶対あってはならないというもので、重く受け止めたい」とした上で、県内、国内、国外を問わず、あらゆる可能性を排除しないとした県関係国会議員や自民県連の判断をあらためて評価。「私もそのような考え方だ」と述べた。

 佐喜真氏は2012年の市長選挙で「固定化を阻止し、一日も早い県外移設を求める」と基本政策に掲げ当選した。