【エネルギー政策】与党は公約を守るべき

福島民報2/3論説より
 政府のエネルギー基本計画策定が宙に浮いている。1月に閣議決定を予定していたが、計画案のうち、原発を基盤となる重要な基礎的電源と位置付けた表現について、重要性を薄める方向で検討に入った。9日投開票の東京都知事選で脱原発が争点化し、自民党の一部や公明党で見直し論が強まる。都知事選のため国策を見直すのは本末転倒だ。争点隠しに見える。
 東京電力福島第一原発事故発生後に初めて策定する計画案には「原発は引き続き活用する基盤となる重要なベース電源」と明記された。平成24年12月の衆院選で、自民党は「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」、公明党は「可能な限り速やかに原発ゼロを目指す」を公約に政権を奪還した。都知事選の結果にかかわらず、「脱原発」という国民との約束は守るべきだ。
 衆院選後、安倍晋三内閣は「原発再稼働の推進」を成長戦略に盛り込む。安倍首相は1月末の衆院本会議で「海外の化石燃料への依存度が高い現実を考えると、そう簡単に原発はもうやめると言うわけにはいかない」と述べた。
 霞が関や経済界は、化石燃料輸入増で電気料金がさらに上がり、産業競争力が低下すると懸念する。政府試算で、25年度の燃料輸入費は、運転停止中の原発の代替分だけで22年度比3.6兆円増えた。目前の経済情勢を見れば、原発に頼りたくなる。
 ただ、共同通信社が1月に実施した全国電世論調査で、原発再稼働に「反対」は60.2%と「賛成」の31.6%のほぼ2倍だった。自民、公明両党の支持層も反対が賛成を上回る。民意は原発を求めていないといえる。
 エネルギー開発は従来の自然・再生エネルギー以外も進む。気象に左右されない宇宙太陽光発電は、日本が研究の先頭を走り、2030年代の実用化を目標にする。自前の資源「燃える氷」メタンハイドレートは5年後の商業化を目指す。送電の電力損失を減らす高温超電導送電線は製品化され、超電導の充電池・蓄電池は実用化へ試験が続く。
 原発推進の理由に、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)抑制がある。しかしCO2の地中への封入技術や根本的に減らす人工光合成の研究も進む。
 政府は成長戦略の主軸に、旧来の原発よりも、先進エネルギーや新たな省エネ技術の開発を据えてはどうか。電気事業連合会自民党議員に原発新増設を働き掛ける前に、輸入燃料のコスト減に努力する責務がある。