うれしい異変?理由はアニメ 鳥取県岩美町

業界紙トラベルニュースより
鳥取県岩美町と言えばこの時期、漁獲量日本一を誇る松葉ガニや幻の海老と称されるモサエビが旬。ところが、町観光協会の田中幸治郎さんと町関西事務所の長戸清さんがこのほどトラベルニュース社大阪本社を訪れ、紹介してくれたのは意外な話題。
「冬の寒いまちの中を若い女の子が歩いているんです。しかもグループで」(田中さん)。「この間の『凛ちゃん』の誕生日、2月2日なんですけど、まちの洋菓子店からケーキがあっという間に売り切れてしまったらしいんですわ」(長戸さん)。2人そろって興奮気味に話し始めた。
日本海に面した岩美町を冬に訪れるのは食通か温泉好きが定番で、波荒れる日本海を眺めるのはカラオケのモニターに出てくるような陰影のある女性と決まっていた。
その異変は、大阪近辺では昨年7―9月の毎週水曜日深夜3時前後に放送されたアニメ「Free!」がきっかけ。架空の岩鳶高校水泳部に所属する高校生たちを描いた青春もののアニメで、その舞台がまんま岩美町だった。
「と言っても番組中には岩美町とは一切出てきません。皆さんは場面を見て、岩美だと分かったみたいです」と田中さん。
放映から間もなく若い女性が目につくようになった。10―11月の休日は観光協会に用意してある15台のレンタル自転車が連日出払った。アニメに登場する漁港や神社、通学路をわさわさと若い女の子たちが歩き回る姿はまちの人たちも驚かせた。
観光協会では急きょ「Free!」のロケ地マップを作成し、民宿では主人公の遙が好きなサバ定食、サババーガーを用意した。
長戸さんは「夜中の3時にやっていたアニメがこんなに効果があるとは。アニメを好きな人たちの行動力と情報ネットワークに驚いています」。田中さんは「岩美町の人たちが彼女たちを素朴に親しみやすく受け入れてくれているのも口コミで広がった理由のようです。東京など遠方から来てくれるファンも多く、宿泊など経済効果も大きい」。
2人そろって「アニメはすごい!」と感嘆し、山陰海岸ジオパークのまちに新たな魅力が加わったと話していた。