【大自然に畏怖 恵みと向き合う】

6月20日の神戸新聞朝刊の“発言”欄に投稿が掲載されましたので紹介します。(T.MATSUOKA)

 浅間山の噴火警戒レベルが2に引き上げられ、口之永良部では住民が島外避難となった。桜島は昨年を上回る回数の爆発的噴火を記録している。多くの犠牲を出した御岳山の爆発以降、ほかにも蔵王、吾妻、箱根などでも鳴動や異変が続き、火山列島は活動期に入ったのか。
 火山はどこも屈指の観光地だ。噴煙たなびく風景、登山、温泉、さらに火山列島独特の地形が生み出す豊かな食材は、生活に得がたい彩りを添える。しかし大自然は近年、人々に危険列島に住んでいる「覚悟」を持てと頻繁に言ってくる。
人間の力をはるかに超える自然。古来、祖先は自然環境に適応しつつ、移動と定住の安全を求め様々な制約を乗りこえる力を付けてきた。それが、科学でありコミュニティであり事業そして政治。それを活かしどう安全に生きるかは人類の永遠のテーマだ。連綿と続く人類の努力を無にする原発再稼働など論外、狂気の沙汰。
 火山の監視、防災、避難など十分な対策は政治の第一の責務である。一方、個人は「覚悟」をふまえた十分な事前調査と慎重な行動、勇気ある決断で自然がもたらす恵みを満喫して先人に続こう。旅に関わる仕事の私たちも自戒を込め自然を畏怖しその恵みに向き合いたい。