世界遺産の旅−明治日本の産業革命(2) 山口・未来拓いた志の地


 「明治日本の産業革命遺産」の構成資産を有する全国各エリアの中でも山口県萩市は少し毛色が異なる。萩反射炉、恵美須ヶ鼻造船所跡、大板山たたら製鉄遺跡といった産業史跡もあるが、注目は萩城下町と松下村塾。いずれも幕末―明治初期といった日本の転換期に重要な役割を果たした地で、いわば日本の近代化への「志」の部分を担った地といえる。
日本の近代化に貢献する人材を輩出
 萩城下町は幕末―明治初期、日本の近代国家への転換を主導した西南雄藩のひとつ長州藩が居を置いた、明治維新の主要舞台。その歴史は古く、戦国末期―江戸初期に毛利氏が建造した萩城の城下町として形成された。
 毛利氏は萩反射炉などの建造を決めるなど近代化のきっかけをつくり、城は現在まで石垣と内堀が残る。堀内伝建地区・萩城外堀は藩の政治・行政の中心地だった旧上級武家地、城下町の大部分を占める旧町人地などに町割り、志士の屋敷などが今も見られる。こういった史跡群と漂う城下町風情が、日本の近代産業化における地域社会の風景を伝えているのだ。
 吉田松陰の私塾「松下村塾」も構成資産として登録されていることにも注目したい。塾生には高杉晋作伊藤博文山縣有朋といった明治維新の主要人物がおり、日本の近代化に貢献する人材を輩出したのはあまりにも有名だ。現在は立ち入りは不可だが、当時の面影が色濃く残る外観は見学できる。