柏崎刈羽原発 地元100社調査の結果


新潟日報の調査転載

原発停止 地元67社「影響ない」
 東京電力柏崎刈羽原発が地域経済に与えた影響や貢献度を調べる目的で、新潟日報社は12日までに、地元企業100社を無作為抽出して聞き取り調査を行った。現在、柏崎刈羽原発は全7基が停止中だが、3分の2の企業が、全基停止による売り上げの減少について「ない」と回答し、経営面への影響を否定した。1号機が運転を始めてからことしで30年となったが、原発関連の仕事を定期的に受注したことがあると答えた地元企業は1割余りにとどまった。30年間で会社の業績や規模が「縮小」したとの回答が4割を超え、原発の存在が地元企業の成長にはつながっていない実態も鮮明になった。
 東電福島第1原発事故後、柏崎刈羽地域では、原発が約3年9カ月にわたって停止している。このため、経済界を中心に地域経済への影響が指摘されている。地域経済活性化への期待から原発の早期再稼働を求める声があるが、柏崎刈羽原発の再稼働が地域経済を大きく押し上げる原動力となるかどうかについては、疑問符が付く結果となった。
 調査によると、原発の長期停止によって売り上げが減少していると答えた社は33社で、減少はないとする社は67社に上った=グラフ(上)参照=。売り上げが減少したと回答した33社のうち、具体的な減少幅について1社が「5割」と答えた。次いで6社が「1〜3割」とし、それ以外は「1割未満」「分からない」などだった。

 また、原発の再稼働をしてほしいかとの問いには、66社が「はい」と答え、「いいえ」が16社、「判断できない」「どちらでもいい」が合わせて18社だった。
 原発関連の仕事を定期的に受注したことがあるという社は14社、何回か受注したことがある社は20社で=グラフ参照=、合計しても全体の3分の1にとどまった。
 1号機営業運転開始から30年間で、会社の業績や規模がどう変化したかとの問いには4割余りが「縮小した」と答え、「拡大した」を上回った。
 特に原発の恩恵で拡大したという企業は少なく、原発が地元企業の成長にほとんど結びついていない実態も浮かび上がった。
 調査は柏崎商工会議所の会員などを対象に10〜11月に実施。柏崎刈羽原発1号機が営業運転を始めた1985年以前に創業した企業を対象に、柏崎市の産業別就労人口(2010年国勢調査)の割合に応じて産業別にコンピューターで無作為抽出した。
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 柏崎刈羽原発の再稼働に向けた国の審査が進んでいます。2016年3月11日で東電福島第1原発事故から5年となるのを前に、原発をめぐる課題をあらためて多角的に検証し、県民とともに原発の必要性を考えていきます。
◎経済効果の検証必要
 柏崎刈羽地域の地元企業100社調査では、原発が地元企業に及ぼす経済効果は限定的であることが浮き彫りになった。東京電力福島第1原発事故後の原発再稼働論議では、九州電力川内原発など各地で、「長期停止で地域経済が疲弊している」という説が自明の前提のように語られてきた。そうした説は具体的な根拠に基づかない“神話”だったと捉えることができる。
 柏崎刈羽地域が原発を誘致したのは、地域経済活性化への期待だった。6月、柏崎商工会議所が中心となり、柏崎市議会に提出した早期再稼働を求める請願は「運転停止による負の影響が市内全業種に及んでいる」と強調されていた。
 ただ、原発が地元企業の経営にどの程度影響しているのかという調査事例は少なく、原発立地地域では、原発と地域経済は密接な関係にあると考えられてきた。しかし、今回の調査では立地地域でも、経営上、原発関連の仕事に大きく依存する企業は少ないという結果が出た。
 柏崎刈羽原発6、7号機は、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が終盤に入っており、来年は再稼働論議が本格化するとみられる。原発は地域経済の発展に貢献するのか。そもそも原発は必要なのか。今後、これらを議論するためには、冷静かつ正確な現状把握と、事実の客観的な分析から始める必要がある。