終戦・被爆60年の、節目の日に旅行業界から…Ⅲ

日航ジャンボ機墜落から20年、阪神淡路大震災10年、沖縄へり墜落1年ー
6.旅行業界としてどう捉えるか
自らの建前の実行に本音で迫る
 JRの脱線事故や航空機の事故・トラブル、企業の社会的責任にもとる様々な不祥事が相次ぐ中で、企業活動への消費者の視線の先鋭化は避けられない。中小企業といえどもそれを免れることはできない。経済的、人的基盤の脆弱な中小企業にとってはその環境の変化を見誤ればまさに命取りである。ネット時代のサービス業である旅行業においてこの変化をどう捉えるか。
 単なる手配代理業から、自己の責任で仕入れ・企画し自己の責任で販売する方向への転換を迫る改訂旅行業法、顧客情報をより多くより深く持つことが顧客サービスにつながるとしていた従来の対応の変更を迫られる個人情報保護法などの施行によりすでに環境はますます厳しくなっている。
 建前と本音論でいえば、国民のたたかいで作り上げられていく「建前の水準」の企業活動を実践するには、中小旅行業者としての自らも国民の一部分としてたたかいにたちあがることでしかあり得ない。すなわち、企業の目線を大企業でなく消費者、利用者(旅行者)に向けること、そして大企業などの本音に同調せず、為政者に建前の実行を迫る声を上げることしかない。
平和依存でなく平和に主体的関わりを
 とりわけ、平和の問題では、旅行業界の役割は大きい。「旅は平和へのパスポート」といわれる。旅先での人々や文化の交流が平和の大きな土台をつくるという意味で、旅の持つ平和への役割は少なくない。しかし一方で、そんな役割を持つ旅行であっても平和でなければ旅行はできない。旅行業界はそんな役割を持つ旅行環境を守るためにも、また自らの仕事を守るためにも、平和の危機に対して積極的に声を上げ平和を維持しつくり上げる責任がある。これも建前の動きでなく本音の声を発信しなければならない。
 これは、平和の問題だけでなく、交通、宿泊、食事などの安全、衛生問題でも同様である。JRや航空機、交通機関の安全面で不安があっても、それらを利用せずして旅行はできない。旅館、ホテルなどで、防災・安全、衛生面で問題のある場合、利用しないという選択肢もある、また、必要な基準をクリアしないところは利用しないと施設に宣言し、クリアしている施設のみを顧客に紹介するという機能を発揮することはできる。しかし、航空機やJRは、利用者の立場に立って共に安全第一を求めていくしかない。個別の旅行社では限界がある。旅行業界全体として声を大きくしなければならない。中小旅行業者の協同組合などの役割は大きなものがある。
個別企業としての差別化と力量アップを
 一方で、こうした動きを旅行業者として展開するには、諸々の機関への送客(利用)量の安定した確保が求められる。利用者とともに本音で行動する旅行業者であることを積極的に発信し、その事自身で差別化を図るくらいの構えでいかねばならないのでは…。
 更に、そうした顧客満足追求の本質的な取組みだけでなく、個々の利用者(個々の旅)への満足感と感動を与えるような仕事の水準が求められている。10年前に、神戸の震災で壊滅的な打撃を受けたわたしたちは、旅行業者としての仕事の喜びと、どんな時でもお客様の立場にたってその満足を求めることの大切さを学ぶことで立ち直れたと言っても過言ではない。
 いずれにしても、政治、経済、社会、地球環境、どれを取っても、様々な矛盾が噴出し、企業社会のあり方の国民的見直しが急がれる。こうした時に、私たち中小旅行業者も社会の構成部分として大きな視野に立った理念と戦略を必要である。そして、それを実行できる企業組織のあり方、企業間共同のあり方も問われている。(松岡武弘)