10・19日朝日社説に一言

KokusaiTourist2007-10-21

“消費増税、真正面から議論せよ”との朝日社説について、零細業者である読者の立場から一言したい。社説は、政府が社会保障の財源について2025年には17%までの引き上げが必要との試算を長期見通しとして示したことを、真正面からの議論の構えならとして歓迎している。
その理由として、少子高齢化に入っていき高齢者が増えればかかる費用も大きくなる。だから、国債発行に頼らないとすれば、税金や保険料の引き上げで費用を引き受けるか、福祉サービスの引き下げに応じるかどちらしかないと記されている。
 前政権が消費税問題を避けて選挙をやり過ごしたことから、現政権が議論の材料として「逃げる」こと無く見通しを示したことを歓迎というならわかる。しかし、その理由とされている部分は、「二者択一」を国民に迫る政府・自民党の主張を紹介してるようにも、社説自身の主張にも受け止めれる… が、その後の「私たちも、もはや負担増の議論を避けて通れないと考えている」や「いずれ増税が避けられないのは分かるが、政府の無駄が残るのは許せない」「基礎年金の税方式化を、本当に消費税などの増税なしで実現できるのか、大いに疑問ではある」などの表現をみると、社説は政府・自民党の「二者択一」の主張そのものと同じ立場に立っているのはあきらかである。
 議論を…といい、いかにも「中立」を装いながら、一方の主張、見解を自らの社説で紹介するのは、政治権力の暴走をチェックし、政治的に中立、多種多様な意見を紹介するマスコミの立場を乱暴に投げ捨て、権力の宣伝機関に堕するものといわざるをえない。
 「格差社会」といわれて久しく、労働の在り方も様変わりし、社会保障も毎年のように改悪されているなかで、国民や中小・零細業者の生活と経営は閉塞感のみで展望もなく、まさに崖っぷちにたたされているのです。朝日紙面においてもそうした状況を紹介、告発する貴重で勇敢な敬意を表する記事もよく目にするところです。消費税増税が私たちをさらに苦しめるであろうことは、増税をめぐる世論調査での反対の多さをみてもあきらかです。
 税収を問題にするなら、史上空前の利益を上げているといわれる大企業について、減税を続けてきたこと、利益にふさわしい税金を取るという“税の公平”の立場をなぜ問題にしないのか…また、歳出削減をいうなら、聖域とされているのか、軍事費の無駄づかいを具体的に何故指摘しないのか…
 多くの国民は、そうしたことに不審を持ちながらも、日々の生活と営業に汲々とせざるをえないのである。国会においても、国民の本音ともいうべき、「儲かってるところからキチンと取れ!」「何で、他国の戦争や基地強化に税金を使うんや?」の声が反映しているにもかかわらず、朝日は、こうした「多様な」国民の意見を無視して、政府・自民党とその対抗馬とされる「作られた野党」との表面的な「攻防」を、紹介するのみである。
 マスコミの大道からはずれた特定意見の宣伝、押しつけの路線では、真実の報道というジャーナリズムの原点を汚し、国民世論と日本の将来をミスリードすることになる。のみならず、軍事費聖域化、消費税増税社会保障切り下げか二者択一を国民に迫る路線は、朝日が年初に21本の社説の一挙掲載という大英断のなかでも、特に強調していた、憲法9条の精神を生かした非軍事、経済的、文化的な貢献、日本の役割を果たそうとの提言の意図、姿勢にも疑問を呈せざるをえない。(松岡 武弘)