20数年ぶりの甲子園、50数年ぶりの外野席…!

KokusaiTourist2008-04-26


 娘夫婦の招待を受けて巨人戦を観てきた。まず心配したのは駐車場、往復の満員電車に乗る自信はない。それに行けば行ったで、最近あまり飲めなくなったとはいえ、ビールの1、2杯は飲みたい。娘の車で往復することで、駐車場さえ見つかれば…。と、思い出したのが小学校1年来の友人で甲子園に住み今も付き合いのあるK君。電話で頼み快諾。球場まで徒歩5分、最高の場所。球場までの道すがらは、今はダイエーに姿を変えてしまいその面影すらない母校跡に胸いっぱい。すぐ東側の狭い土手上にあった飲食店街も殆ど姿を変えている。「まさや」といった小さな食堂が野球部、テニス部で過ごした高校時代、練習後帰路に立ち寄る溜まりだった。今は、タイガースの勝利を信じ、6番、53番、25番のユニホームやはっぴをまとった善男善女たちがひきも切らさず球場ゲートに向かう通路である。

 球場北側の43号線の高架下の辺りは小学校時代は芝生が植わった原っぱでもちろん43号線も全通してないし高速高架もない。三角ベースという少年草野球で毎日のように日が暮れるまで遊び走り回った所である。タイガースの試合ある時は、阪神子ども会の会員で入場無料、今では考えられないが当時はダッグアウトの上で寝そべって観戦しホームランを打った藤村と握手などし喜べた時代だった。

 さて、リニューアルされた甲子園、まだ蔦はなく外壁ボードに蔦の絵を描かれていた。ライト側の席で球場を南側にほぼ半周。入り口手前でまるで空港のような厳重な手荷物検査。缶ビールや瓶類は全て紙コップに移し替え、カバンや袋は中味を点検される。席は右中間の前から5番目、時間は4時半、タイガースの練習は終わり巨人の打撃練習
中。内野席にあった甲子園名物の巨大な銀傘が両翼のアルプス席近くまで拡がったことと、子供の時に高校野球を誰かに連れられて来て以来の外野席だったことで、球場が狭く感じた。正面に見える内野席はまだまだチラホラでも、外野席には早くからファンが詰めかけすでに盛り上がり始めている。

 昔に比べるとタイガースファンも上品?になった。近くに試合開始前から酔っぱらい、外野で練習中の巨人選手に罵声を浴びせているのもいたが…。かつては私設応援団の中には、周囲におかまいなく傍若無人にふるまったようなのもあり、球団も改革に乗り出し迷惑な振る舞いには規制を強めたと聞いている。それでもいつもテレビで見慣れているあの熱狂的な応援、特にライトスタンドの立ち上がっての“狂喜乱舞”の応援の中に入っていけるのか…。失礼ながらあの人達は違った“人種”じゃないかと不安だった。

 ところが、それは杞憂!スタンドの椅子は左右、前後とも狭苦しいことこの上ないのだが、みんな仲間!全く見ず知らずのたまたま席が近いだけで、野球談義、ファンオタクの自慢話しの連鎖。「島根しんじ虎会」を名乗るはっぴ姿の二人はあのタイガースカラーで彩った車で島根から今日着いて試合が終わってそのまま帰るそうな。でビールも飲まない!はっぴの背中にびわこ猛虎会と記したグループも目立った。新調のユニホームをまとった親子連れやカップルも多い。実際にスタンドの真っ只中にいるのと、テレビで想像してたのとは大違い!違和感なく一体となれたのは、半世紀を超えるファン歴だけではなかった。みんな一生懸命なタイガースファンで、多くの人が定連と言うわけでなく、たまたま切符を手に入れて応援に来たのだろう。

 驚きは、そんなスタンドを取り仕切る?私設応援団のみなさん!どんなシステムになってるのか詳しいことは判らないが、その組織的な動きは感動?ものである。指揮者がおり、大太鼓、小太鼓をたたく人、トランペッター、唱和のプラカードを掲げる人ごそれぞれの場所でただ黙々と与えられた任務をこなしている。その顔は淡々としていて真剣そのものである。ゲームも殆どみることなく指揮者の方をじっと見つめ指示を待っている。打席に入る、チャンスになる、タイムリーが出る。その時々状況に応じて小さなプラカードが掲げられ、初めて外野席に飛び込んだ我々のようなものを巻き込んでスタンド全体がそれをメガホンや地声で唱和し、小さなバットをたたくのである。その統制?たるや見事の一言に尽きる。

 ただ、ひとつずっと感じていてやめて欲しいことがある。相手方の投手交代時に“奏でられる”名曲である。これは応援の域を越えている。降板させた味方の力に満足しその打線にを誇ればいいではないか。すでにゲームから離れた降板投手を追い打ちして何になる。この曲は、我々自身の卒業式の想い出と直結する曲で降板投手に浴びせる曲には馴染まない。それだけでなく、これはスコットランド民謡の名曲であり、こんな場面で使われるのをスコットランドの人達は決して喜ばないだろう。何年か前に、解説者の江夏さんが同じような指摘をされたと聞き、我が意を得たりと思い期待をしたけれど、今も何も変わってない。

 試合は6対2でタイガースの快勝で十分満足できた。大体若い頃たまに行って気分よく勝ったという記憶はあまりない。それだけに大いに楽しめビールもうまかった。実は次の日も奇跡的なサヨナラ勝ちを収めふたたび上り調子になったのはいいけれど、観戦した日にあの勝ち方をやられたら私の無呼吸症候群と過呼吸で少々心配な心臓はイライラと爆発的な喜びに耐えれなかったかも知れない。前の日の快勝こそ何よりの“薬”であったかも…