安武ひろ子さんの歌集“いのち愛おしく”に思うその3

KokusaiTourist2009-01-10

 安武ひろ子さんが歌集第4集“いのち愛おしく”を発刊されました。その歌集の感想を、機会をいただき同人誌“はばたき”(兵庫文化クラブ発行)第11号に掲載していただきました。編集責任者のご了解を得て当ブログに転載します。歌集ご希望の方は取り次ぎさせていただきますのでお申し出ください。“はばたき”もご希望の方はご連絡ください。

平和希求と人間讃歌、楽天的信念が道を生む
―安武ひろ子さんの歌集「いのち愛おしく」に思う―
松岡 武弘1月7日その2より続く


平和と人間らしさをたたかい求めて
 歌集への感想を書く機会をいただきました。これだけの歌の一つ一つについて感想を述べることは、私の力を超えています。歌集を手にし収められた歌を一通り読み、心に留まった歌を書きとめていました。
いま感想文を書くにあたり歌集を読み返してみると、一度は素通り?したいくつかの歌が今度は、安易に先に進むことを許しません。詠まれた情景や作者の心の内をいろいろ私なりに思い描いてみました。
歌を詠まれる際、ただ1度の書き下ろし?もあれば、何度も筆をいれ言葉を変え順序を変えられることもあるのでしょうか。おそらく歌集の中に、じっくり読めば読むほど味わい深く共感できる歌も多数あるのでしょう。それを味わい自分の言葉で表現するには至っていませんが、歌集全体を通して感じたまま書き留めることはできるかもしれません。

※告発、怒り、優しさ、尊敬、偽り
 戦争の残虐性の告発、抑圧者への煮えたぎる怒り、大自然と小さき生き物への優しさと愛。人間への信頼と尊敬。同時に偽りを見抜く慧眼のたしかさ、たたかい途上での裏切りへの大きな怒り。
 わら人形を竹槍で突く訓練が何になりしや街は廃墟に
 二千万の命を奪うも責任を問われぬままなり「人間天皇
 数万のヒマワリすべて東向き意志もてるごと日の出待ちいる
 共存のできぬ悲しさハチもまた地球に生きる権利を持つに

 歴史に残る偉人ですマスコミに答えればぐっと胸迫り来る

 才豊かな秘書と思えど時にみする要領よさに首を傾げし

※戦い続けますと自らに、そして“千の風”にも
 自ら「夕映え」と呼ぶ時に、なお平和のためにたたかいきろうとされる誇り高い決意、そして家族への限りない愛情が満ちあふれています。
 口つぐみ無残かたらず来たれども残生わずか 語り部とならん
 綱領の未来社会に胸膨らむつくづく悔しも余生の短さ
 すがすがと党に拠りて生きるべし見上げる中天満月は澄む

 亡き母の今年も帰り来給うや白曼珠沙華ひそと咲きいず
 揺椅子に揺られ聞きおり「千の風」何するでもなくただぼうぜんとして
 君葬れり夕映えの道帰りきぬもういないのねと涙しながら
 何してる起きなさいよとゆさぶれど応えぬ弟まだ六十一

楽天性とユーモア、ロマンの源泉
 安武さんの信念にもとづく情熱と行動力が、人間への信頼をより深く、未来への確信をいっそう揺るぎないものにしているのでしょうか。それが、ユーモアと希望いっぱいの歌、ロマンチックな歌が生まれる素となり、「重い」テーマの多い歌集にもかかわらず、未来に立ち向かう勇気を読む者に与えてくれます。
 年齢ゆえの選別などはアウシュビッツと抗議ハガキに太ぶとと書く
 使い捨て選別廃棄などさせぬ 生きてやるぞ人間らしく
 新体操のデイケアに行くと101才驚き聞けば玉転がしとか

※ロマンティスト、「年をとらない」作者の面目躍如
 ベルリンの駅に紅きバラ一輪もてる男性誰を待てるや
 われもまた花持つ人に待たれたし異国に来たりて羨むており
 しきり降る小雪か柳の絮飛びてショパンの象に優しく積もる
 ういういしい相聞の歌碑を辿り行く綾子、光世のひたむきな愛

※事務所まで署名を集めに来られました。阻止できたのですね!
 生き生きと笑みかわしつつビラを撒く駅無人化を阻止できました
 「有り難う」の声に苦労も吹き飛びぬみどりの窓口復活したり

阪神ですね…今年は“秋の夜寂しく響く弔いの虎に届けよ一人打つ鐘”でした…
 阪神の勝利の瞬間電飾はトラ縞に変わる明石架橋は
 阪神の勝利のドラマに一夜漬けのファンの我もしばし酔いいる


 作者が歩んでおられる“ひとすじの道”こそ、芸術も含め創造力、楽天性、ユーモアとロマンの源泉かと感じないわけにはいきません。
 最後に、安武さんの作意とずいぶん違った読み方をしてしまったのも多くあったことをお詫び申し上げるとともに、文学、芸術に縁のうすい私にこういう機会を与えていただいたことにお礼申し上げます。今後も創作活動に精を出され、お元気な安武さんにお目にかかれるのを楽しみにしつつ。
(おわり)