観光庁、観光目標達成にアクションプラン策定

KokusaiTourist2009-01-30

 観光庁が、観光立国推進基本計画の具体的な施策、「観光庁アクションプラン」を発表した。
観光立国推進基本計画の5大目標のうち、
1.インバウンド(海外からの訪日客)の推進
2.アウトバウンド(日本人の海外旅行)の推進
3.国内観光旅行の推進
4.国際会議の誘致
 の4つについて具体的な施策と実施時期を示している。 
 2010年に訪日客1千万人を目標にしているインバウンドでは、世界的な景気後退で昨年8月以降5カ月連続前年を下回ったため景気動向の影響を受けにくい層として、韓国の30代有職独身女性を対象にした温泉中心のプロモーションや、台湾や中国向けに「冬のバーゲンセール」のアピールを08年度中に緊急プロモーション検討している。
 09年度にはインド、ロシア、マレーシアの3カ国、10年度以降にはベトナムインドネシア、フィリピン、イタリア、スペイン、メキシコ、アラブ諸国の7つの市場を海外プロモーションの実施国に加える。また、20年までに訪日外客を2千万人にするとした新たな目標については、今年3月までに戦略を策定する。

 国内観光の振興については、数値目標として10年までに日本人1人当たりの年間宿泊数を4泊に増やすとする目標が掲げられている。しかし、03年以降、国民1人当たりの宿泊数は減少が続いており07年度の1人当たりの宿泊数は2.42泊と、目標の4泊との差は広がっている
 そのため緊急的な施策ではなく、基礎的かつ中長期的なアプローチとして、08年度中に旅行低迷の実態把握と原因分析を行うほか、1泊2日型から2泊3日以上の滞在型旅行に誘引する環境整備として、観光圏整備に力を入れる。09、10年度は顧客満足(CS)の観点から観光地や宿泊施設を評価するための標準的な手法を開発し、CSに基づいた改善や魅力のアップの競争を促していく
 旅行者のセグメントには、成長性が高いと考えられる大学生、小学生の子どもがいる家族、団塊世代を想定し重点的なプロモーションを検討していくとしている。


 「業界の期待」を受けて設置された観光庁ですが、出入国者数、観光宿泊日数、コンベンション開催数等の目標数字の設定や地域集客プラン策定への協力を地元の観光施設はもちろん旅行社などに呼びかけるだけで、国が音頭を執って各地に集客競争を煽ってる域を出ていません。
 観光地整備やルート開発だけでなく、旅行需要を増大させ地元への集客を願う地域の現実も踏まえ、需要拡大(消費購買力)策と地元の努力への具体的な支援策を講じていただきたいものです。
 観光施設、観光圏整備を国内旅行需要引き上げのテコとし国内で競わせる発想も、限られた消費購買力の中での「しのぎの削り合い」となり、80年代後半の「リゾート法」で各地が大規模観光開発を競った結果、ほとんどが失敗に終わったことの二の舞となるだけでしょう。当時は「バブル」のさなかだったのに…。需要低迷の実態把握と原因分析を行うとしているのは「前進」ではあるでしょうけど…。
 今、経営に行き詰まった各地の有名温泉旅館が次々に「海外資本」や観光・旅館業とは縁もゆかりもないない資本に買収され、1泊2食7800円などという「価格破壊」的営業で旅館業界の健全な発展と旅の満足充足を阻害しかねない動きも急速に広がっています。かんぽの宿」売却の「出来レースも問題になっています。こうしたことに観光庁もメスを入れ「旅行者の満足、従事者の経営の安定を踏まえた本当の観光の発展」のための施策を執ってほしいものです。インバウンド2000万を2020年までにとの目標にしても貿易収支では元々「輸入型産業」の海外旅行業の「輸出型側面」を強めることは、「輸出頼み」が経済危機の大きな一因であったことへの何らの考慮もない「国際競争力」引き上げ絶対視の観光版といえるのでは、そして「観光施策」が競争と市場原理の新自由主義に冒されているということではないでしょうか…。
 本来、観光や旅行は人々の未知へのあこがれ、ストレスの発散、自然との一体化、家族・友人との絆を深める、旅先での交流など内面を充足させるものであり、合理性や競争になじまないはずです。そして旅人を受け入れることは地元の良さを知りアピールしたい地元民の喜びです。もちろん海外からの多くの訪問客に自国の良さを知ってもらいたい思いは日本でも世界でも共通のものです。旅は競争原理に、観光施策は経済政策に過剰に従属させてはならないのです。
(T.MATSUOKA)