『日本のこれから』を考える…

KokusaiTourist2009-02-07


 7日夜、NHKが8時から11時まで、雇用問題を取り上げた『日本のこれから』という「意欲的」?な番組がありました。年末から集中報道された派遣村の湯浅村長や大阪の地域労組の代表も出席されるとの情報もあり注目していました。番組は大きな構えにしては期待ハズレ、やっぱり!といわざるをえません。
 全体として今日の雇用問題の原因、責任、あるいは今派遣切りをとめなければの視点が最初の映像、司会者の設問などにも全くありません。番組タイトルの通り、済んだことは問わない…?ということなのでしょうか。それは、出席していた大村厚労副大臣が現状を招いた政府・与党の責任には全くのほおかむりで自然現象の如くに今の経済危機、雇用危機を論じていたこととつながっているのでしょうか。
 はじめに生産削減、減収減益、派遣ぎり、ワークシェアリング、派遣企業の解雇等々の実態が映像で流された後、司会者の質問に基づき討論が交わされました。
 設問には、「ワークシェアリングで給料が下がってもやむを得ないとおもいますか?そうはおもいませんか?」などがあり、ワークシェアリングが、「時間短縮=賃下げ受忍」と単純化されていました。これでは、雇用も賃上げも可能である企業で、現に行われている正社員解雇と非正規労働者切りの違法行為を覆い隠すだけでなく、人情論での是認を期待?し、結局は「労労間調整、対立」を浮きだたせるような議論にならざるを得ないでしょう。
 関連して局側から企業の内部留保についてグラフを使っての言及がありましたが、「企業は雇用確保に金を使うべきか?」などの問いがだされ、大企業と中小零細との企業格差を無視した一般的論議に誘導された感があります。さらに、大企業の溜め込んだ内部留保は「設備の形になっており現金であるわけでないので、今雇用確保に使うのは無理がある」とのコメンテーター?発言で討論を打ち切るなど特定の意図を感じました。
 ほかにも、ある出席者から出た「企業や国の援助はする必要ない!仕事はある。自分で作らないと…頼らないで自己責任で頑張らねば…」といった会場の失笑、冷笑を買った「特異な」意見を取り上げ、他の出席者から出された当然誰でも持ってる仕事探しや仕事に頑張る気持ちとを司会者が意識的に結びつけ、それらを「自己責任・頑張る派」と称し会場を二分するような意見としてまとめようとしたのも異様に映りました。
 さらに、今でも仕事はあるとして農林業、福祉などの職場での人手不足、求人倍率の異常な高さが示された映像は、「その気」があれば仕事はあるのに…選択してる時か…!といった議論、主張拡大の暗示を感じます。もちろん年度末を控えこれから厳しさが増そうとしている時であり、今は「ミスマッチ対策」も含め十分な対策を求める巨大な声があります。しかし、原因の追求、解雇、派遣切りを止めさせる視点を欠いた議論では、自己責任論に乗っ取られる恐れあります。この点では年あけてからのメディアの報道にそういった“芽”とも言える微妙な変化が出てきてるのではないでしょうか。
 その他の設問も、「正規の条件を下げるのに賛成か否か」といった不適切なもので二者択一を迫り、答えにくいとの出席者の声も多く出され、少なくない人がどちらもと答えていたようです。複雑な社会問題を二者択一で回答を求めるやり方は、立て続けの政権交代郵政民営化の現状の混乱をみればその誤りは明らかでしょう。それともNHKは、4年前の二者択一選挙で味をしめその継続に固執する勢力と同じ立場に立っているのでしょうか。
(T.MATSUOKA)
写真は“七芸”のホームページより
http://www.nanagei.com/index.html