街道を行く旅 銀の道

KokusaiTourist2009-03-23

(スペイン)
(業界メディア 日刊トラベルビジョンより)[掲載日:2009/03/23]
 移動するにつれ次々と変わっていく風景や文化を楽しむ。道を歩くことは旅の原点だ。世界にはひとつのテーマや歴史を、歩くだけでたどることができるルートが多数存在している。ドイツの「ロマンチック街道」がよく知られているが、そのほかにも歴史的な街道から観光用に整備されたものまで、移動して楽しむ旅ができる道を紹介したい。
イベリア半島を南北に縦断

 スペインで最も知られた道は、イベリア半島北部を東西に横切る「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」だろう。和歌山、奈良、三重の三県にまたがる「紀伊山地の参詣道」と同様に「道」が世界遺産に登録されている、世界でも珍しい例だ。
この巡礼路と交差する形で、イベリア半島を南北に縦断している興味深い道がある。それが「Via de la Plata」(銀の道)だ。

 スペイン北部の大西洋に面したアストゥリアス州のヒホンから、南部アンダルシア州の中心都市セビーリャまでの約700キロメートル。ローマ帝国支配下にあった頃に、南北を結ぶ交易路として整備された道だ。イベリア半島北部で産出した銀をセビーリャに運び、そこから川と海を通ってローマに運ばれたことから「銀の道」と名付けられたが、このルートを運ばれた物資は銀にとどまらず、生活物資から軍事物資まで、あらゆる物と人がこの道を行き来していた。
街道のグルメに注目
 複雑なスペインの歴史を反映するように、沿道にはさまざまな歴史遺産が点在している。ガウディが設計したオビエドの司教館、巡礼路と交差するアストルガの町、サモラやカセレスの旧市街、サラマンカの大学、そしてセビーリャの大聖堂。趣のある街並みや美しい教会など、見どころが満載だ。しかし歴史以上にこの道を歩くときのテーマにしたいものがある。ずばりグルメだ。

海辺の町から山中の畑まで、南北に長く延びる道沿いでは、バラエティに富んだ地勢と気候と環境が楽しめる。そのため土地ごとに特徴ある食材が生産され、長く複雑な歴史が、それらの食材を世界トップクラスの「うまいもの」に昇華させてきたのだ。その代表はサフラ近くで生産される「イベリコ豚」だろう。放牧され、ドングリだけを餌にした豚が最高のもの。生ハム(ハモン)で食べるのが最もおいしいとされる。また、ヘルテの谷では「ピコタ」の名で知られる最上級のサクランボの産地。メリダの近くではスペイン有数の高級オリーブオイルを作っている。北部のカスティーリャ・イ・レオンのトロで作られるワインは、原産地呼称に認定されているスペインを代表するワイン。そしてほとんどのエリアで地元のワインとチーズを楽しむことができる。
 銀の道の北の出発地となるヒホンに近いのは、オビエド空港。南はセビーリャ空港。セビーリャへはマドリードから高速鉄道AVEでも行ける。銀の道での移動は、レンタカーがもっとも便利だろう。
▽銀の道(スペイン政府観光局)
http://www.spain.info/JP/TourSpain/Reportajes/1/Ruta%20de%20Plata?SubSys=Dstntn&language=JA