増える「協同労働」 働く人が出資・経営

 2009年最後の情報です。
 当国際ツーリストビューローも今年4月に、運営を株式会社から労働者協同組合に移行させました。法制化を求める運動が拡がる中での移行でしたが、労協の組織の特質を生かした仕事づくりにチャレンジした半年でした。
 来年も、経済、社会とも波乱含みです。従事組合員の自由・自立・連帯・責任を引き続きキーワードに、出資組合員とともに社会的連帯と共同の行動を起こす想いを込めて2010年を迎えます。今年1年大変お世話になりました。お礼と感謝を申し上げ、皆様方も2010年が希望の年になりますようねがいつつ…


11月27日読売新聞より
 会社に雇われて働くのではなく、働く人が出資者と経営者を兼ねる「協同労働」が増えている。こうした働き方をする人たちは、介護・子育て支援の分野を中心に、全国で約3万人に上る。「雇われない働き方」とはどんなものなのだろうか。(針原陽子
◆高い意欲
 労働者協同組合(労協)・船橋事業団(千葉県船橋市)は、「協同労働」として12事業に取り組んでいる。その中の一つが、ヘルパーステーション「ゆりの木」だ。
 「会議ではヘルパーがどんどん提案する。研修も休まない。仕事に対する意欲が違う、と驚きました」と、今年4月に加わった女性スタッフ(37)は、当初の印象を語る。
 ゆりの木は、事業団のヘルパー講座の受講者を中心に2002年に設立、介護保険と保険外のサービスを提供している。現在、15人のヘルパーが所属。月3回のヘルパー会議には原則として全員が参加し、対等の立場で活発に意見を交わす。
 「協同労働」は、働く人たちが出資して協同組合を作り、仕事を起こし、共に経営する、という働き方だ。事業主体として、30年以上の歴史を持つ労協は、オイルショックで職を失った中高年が、自分たちで仕事を作ろうとした運動が始まり自治体から委託を受けた清掃業務や公園緑化などから、近年は、介護や子育て支援の事業に進出、中山間地では農業支援なども行っている。
 船橋事業団の業務は、ゆりの木のほか、手作り弁当の配食と高齢者施設の食堂運営、清掃や物流、不用品処分などで、働き手は100人を超える。経営方針などについては、職場の代表者が参加する月1回の「理事会」で決め、賃金など労働条件については理事会の下に置かれた「賃金労働委員会」で話し合われる
 不況を反映してか、最近は職員の募集に対して働き盛りの男性の応募が急増。8月に入った男性(38)は、「前の職場は、まともに休みも取れず、自殺した人もいた。給料は半減したけれど、ここなら一生働けるかなと思った」と話す。事業団の杉本恵子理事長は、「派遣切りや、少ない正社員への仕事のしわ寄せなど、企業の職場環境は厳しさを増している。協同労働のような働き方が求められている」と指摘する。
◆法律は未整備
 協同労働をする人は全国で3万人、事業規模は年300億円に上る。最近は、派遣切りに遭った人や若年無業者ニート)の受け皿としても注目を集めている。
 しかし、協同労働の実施主体に必要な要件を定めた法律がなく、便宜上、NPOなど別の法人格を取って活動する組織が多い。協同労働を実践している組織「ワーカーズ・コレクティブ」の連合会である「ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン」の藤木千草事務局長は「みなし法人では、何かあった時、個人に無限責任がかかる」と問題点を指摘する。「NPO法人では出資ができず、誰かが代表になってほかの人と雇用契約を結ばなければならないなど、今ある法人の形態は協同労働にそぐわない。きちんとした法律が必要」と訴える。
 労協などの働きかけの結果、08年には法制化を目指す超党派議員連盟が発足、来年の通常国会への法案提出を目指している。協同組合に詳しい中川雄一郎・明治大教授は、「協同労働は、非正規労働が無秩序で広がるなど、雇用が破壊された今の日本に必要な働き方だ。農業支援など、地域に必要な事業を手がける組織が増えれば、地域再生にも役立つ。根拠となる法律の制定を急ぐべきだ」と話している。