「カンテツ」な働き

を美化するな!
“全国過労死を考える家族の会”がNHKの「カンテツ」の働きを礼賛した番組づくりに、再び抗議申し入れをされました。ディーセントワーク&ライフを目指す労協 国際ツーリストビューローも賛同し、下記に申し入れ全文を掲載させていただきます。NHKからの3月1日付け回答は下記をご覧ください。



申 入 書
2010年3月 日
全国過労死を考える家族の会
代表世話人 寺西 笑子
過労死弁護団全国連絡会議
代表幹事 松丸 正
日本放送協会
会長 福地 茂雄 様

私たち両団体は先日、居酒屋の女性店長の「カンテツ」の働き方を無批判に礼讃した番組づくりのあり方を見直すよう申し入れました。これに対し貴協会は、「法令などを考慮しながら番組制作を進めており、内容に問題はないと考えています。」との見解を述べています。
しかし、本年2月23日深夜に放映された「カンテツな女」では、35才独身の女性長距離トラック運転手の働き方を描いていました。その勤務は午後2時35分に荷積みから始まり、終了は搬送先での荷卸しが終わる翌朝7時20分までの拘束18時間45分の長時間労働です。食事もコンビニ弁当を車内ですませています。この女性ドライバーは、かつて過重な勤務が続くなか2回血を吐いて救急車で病院に搬送され入院した経歴も有しています。
厚生労働省が定めている「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号、改正平成12年労働省告示第120号)によれば、貨物自動車運転者の1日当たりの拘束労働時間は13時間を原則としており、16時間を超えることはできないとされています。
放映された女性ドライバーの勤務は、明らかに「改善基準」に違反した過重なものです。「改善基準」は、貨物自動車やタクシー運転者が過労死として認定されるか否かについての基準ともなっており(「改善基準」とはいうものの「過労死基準」に近い内容になっています。)、「改善基準」を逸脱した勤務であるとして過労死として認定した判例は枚挙に暇がありません。
また、1月19日深夜に放映された美容師の労働時間は午後9時(番組では午後8時20分ころに入店していました)から翌朝9時までであり、週6日の勤務です。休憩(番組では手製のおむすびを食べていましたが)時間が1時間あったとしても週66時間の実労働時間であり、労基法の週40時間の法定労働時間を超える労働時間は26時間に及び、月に換算すれば100時間を優に超える長時間労働です。
厚生労働省が定めた過労死の認定基準によれば、発症前1ヵ月間におおむね100時間を超える時間外労働が認められるときは業務上と判断するとしています。
この美容師の勤務は、この過労死ラインを超えた長時間労働になっています。
更に、1月26日深夜放映の「ディスプレイデザイナー」、2月2日深夜放映の「介護福祉士」、2月9日深夜放映の「雪を降らせる女」もその労働時間は12時間を超える完全徹夜勤務です。この番組が、女性の働き方として礼讃している「カンテツ」の長時間労働のなかで、女性、男性を問わず、多くの過労死・過労自殺という悲劇が生じているのです。
このような番組制作は、常軌を逸した「カンテツ」の働き方、ワークライフバランスを無視した働き方を美化し、当然視するものです。過労死・過労自殺をなくすための取り組みを進めている私たちとしては看過できない番組です。私たちは貴協会に、このような番組作りを直ちに見直すとともに、「カンテツ」の長時間労働の働き方の問題点に批判の目を向けた番組作りをされるよう、重ねて強く申し入れるものです。

【連絡先】〒590-0077
堺市堺区中瓦町1-4-27 小西ビル6F弁護士 松丸 正
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