朝日新聞社説に意見!

KokusaiTourist2010-06-27

今日6月27日の朝日新聞社説は下記の様でした。観光業界に身をおくものとして一言申し上げたい。 斜字「」部分が社説の抜粋
タイトル観光ニッポン―旅先として魅力に磨きを
 「魅力ある旅行先として、日本がアジアをはじめ世界の人々から見直されつつある」

 事実は→03年以降521、614、673、733、835、835、09年679万で確かに08年までは政府のVJC(VISIT JAPAN CANPAIGN)によるテコ入れで右肩上がり、06年の観光基本計画の10年までの数的目標として掲げられた中で唯一スタート年を上回ったのはこの分野だけである。直近の09年は約2割も減少している…
 「新成長戦略では、日本を訪れる外国人旅行者を10年後に2500万人に増やすという。昨年実績679万人の3.7倍という高い目標だ。 それでも成長著しいアジアの中の日本という地の利や、観光資源の潜在力を考えれば達成は難しくない。」
 まずは、10年の1,000万達成がどうなるのか…?仮に目途がついてるとしても、その6年後に150%の1,500万、10年後の2020年に2,000万というのは、世界経済の現状をリアルに見ない机上の空論に近い。「高い目標」といいながら、「達成は難しくない」とは何を根拠かと理解に苦しむ。確かに、観光資源という場合、その地域の自然、歴史、文化名的価値ある観光資源ということにはなるけれど、訪問者の存在・状態も広い意味で観光資源ではある。アジアを「成長著しい」の一言で期待の訪問客であり続けるのかどうかの検証も必要ではある。
 「人口減少下で伸び悩む国内消費の盛り上げや、日中関係の成熟にも役立つと期待される。 …
 外国人向け観光地としては秋葉原や京都が代表格だが、四季折々の自然や、歴史を映す伝統文化などの観光資源に恵まれた地域はたくさんある。 …」

 外国人旅行者の国内消費に過度に期待するのも、本末転倒。輸出偏重、国内消費力引き上げに十分な配慮をしなかった経済政策のツケが、世界経済危機が先進国の中でも顕著に表れたことに何の教訓も学ばず、観光分野で過大な輸出目標(訪日観光は“輸出”、日本人の海外旅行は“輸入”)を立てているだけ。国内消費の伸び悩みを人口減少の結果とまでは言ってないにしても、関連づけてるのもその意味を問いたい。
 「これまでは、魅力を生かし切れていなかった。日本への外国人旅行者数は世界で28位、アジアで6位だ。マレーシアや香港は2千万人規模の旅行者を受け入れている。日本がそれを上回れないはずはない。 …」
 外国人旅行者が相対的に少ないのは、長年の輸出偏重の貿易政策による円高基調で、日本への旅行費用の高騰が主要な背景であった。近年、“国際競争力のある国内観光地の整備”をと言われているが、貿易収支の均衡以上に、観光は“双方向”が望ましい。他国を引き合いに、「日本がそれを上回れないはずはない」とは、その国の努力を含め様々な条件、実態をぬきにした、単に数的競争を煽るだけではないか。
 日本人の外国旅行を含め豊かな余暇・レジャーのあり方とその条件づくりをもっと考えるのが観光立国に前提ではないか。
 それを抜きにした国内の経済活性化や、貿易収支の改善等を目的に、外国人旅行客の増加を数的に過大な目標を設定し実現のために諸々の施策をとるのは、新自由主義の観光版といっても過言でない。
 確かに観光による経済効果は少なくないし、地域によっては主要産業であるところもある。しかし、観光は経済活動に矮小化されるものでなく、国際観光は“双方向の人間・文化交流”であり、対等性も大切な条件である。笑顔で受け入れてくれる側の人達の条件、状態も観光交流の大きな要素である。
 観光を経済政策に従属させてはならない、ひとり1人にとっての、一つ一つの国にとっての観光とは何かを考えて双方向の観光施策を打ち出していくことが大事ではないか。そうすることによって、旅は平和へのパスポートという言葉が生きてくる
(T.MATSUOKA)