彼の音楽を何と伝えたらいいのか。

KokusaiTourist2010-08-19

ブログ クラシックどっぷり日記 〜音楽回想〜から全文掲載させていただきました。
http://plaza.rakuten.co.jp/majinn8888/diary/201008140000/ 彼の作品には、被爆二世である、唯一の痛み、悲しみ、辛さを感じれます。
ホールに到着し、早々と席につきました。まだ開演まで30分以上あるのに。何かが自分を行動させた、徐々に時間は進み、ホールにも冷気が漂います。
知らないうちに席はみるみる埋まり、空いている箇所がほとんどない状態で、入口から腕を抱えながら、杖をついて現れたのは、佐村河内さん。彼は客席に座り関係者の方に挨拶、テレビで撮影などされていました。
チャイムがなり、団員が登場すると会場が固まったかのように感じました。
指揮者の秋山さんが登場し、一気に場の雰囲気は一変しました。
 東京で聴いた一楽章が思い出されます、
静けさの中から、これから何が起こるかわかるように、低音から開始される、ベースのピッツは鼓動を表しているようで、悍ましさを感じます。
次第、オーケストラと合流し、壮大なマグマのごとく噴火する。
彼の中に眠る遺伝が呼び冷まされたかのようです。
弦楽のハーモニクスがとても綺麗で魅了されます。
 所々で奏でられるコラールでは、私の感情を揺さぶりまして、感極まってます。やはり、彼はタダモノではないと、改めて思いました。私の隣にいた女性は感極まって、目頭を何度も押さえていたのが印象に残ります。
 まだ一度も演奏されることがない、二楽章は、三つある楽章の中で一番長いという、それがあり今まで演奏をしていなかったようです。
 出だしは、管による洗練されたハーモニーから、この楽章自体、全体的に綺麗で彼の考えている音楽を伝えてくれたもです。途中でのチェレスタが良いアクセントとなっており、ささやかなコラールを奏でが、その後が嘘のように暗黒に染まる。あの一時は何だったのか?!
終了に差し掛かり、彼の中の不安が低音で表現されており、ハープも一音、小節ごとにあるののに、ハープとしての軽やかな音色はなく、ベースと共に暗闇へと誘い終了。
 この楽章は、他とは違い、彼の気持ち・願いが音楽になっていたように思えました。
そして、総括とも呼べる三楽章は怒りに満ちたもの。私だけ何故?、この痛は何だ!言わんばかりに彼の痛みを音楽にぶつけているように感じ、その痛みと怒りはオーケストラ群となって我々の鼓膜を震わせます。
 そのかわり、コーダに近づくと音色が洗練され、今までの激しさが嘘のように弦楽がさざ波のように宥めてくれます。ハーモニーが綺麗で天に昇るような光を見た気がしました。
 徐々にオーケストラと共有するかのように高らかと鐘が平和を祈ります。戦争、核兵器の不必要さを聴かせてくれており、平和の大切さを三楽章で教えてくれました。全ての楽章に鐘が鳴っていたのは、平和の主張を感じました。
 演奏が終わり、拍手喝采とブラボーの嵐。これだけ強大な作品を演奏した京響もそうだが、それを表現し的確に指示、長時間立って指揮した秋山氏も凄いと思った。
 秋山氏が拍手に応え、客席にいた佐村河内氏に賛美した。彼は席を立ち、杖に必死に捕まりながら壇上に上がり、秋山さんと抱擁した時は、拍手も一段と大きくなり自然と涙が出た。この拍手は彼のものです。
 彼は弦の1プルートの人、一人一人に握手をし、客席に礼をした。彼は、まだ実感がわかないのだ、徐々に彼は感情が高まり涙を拭っていた。彼は身体の痛みを堪えながら幾度と出てきてくれ、客席に会釈をしてくれ、女の子二人が出てきて抱えきれないくらいの花束を渡していました。その中には、以前『女性自身』で見た右手のないミクちゃんがいました。
 一度下がり、もう一度はミクちゃんと二人だけ登場し、佐村河内氏はマイクを持って流暢に話してくれました。この演奏会に来てくれた人は聴きに来たわけではなく、平和を祈りに来てくれた人だといってみえました。大人が核兵器廃絶を行わないと将来の子供たちに平和がないと語っておられ、被爆二世だから言えること、障害があること、起こっては遅いことを感じました。
 最後に印象に残ったのは、彼は耳が聞こえないので、ミクちゃんに盛大な拍手を送ってくださいと言葉詰まる言い方をした時、心が揺らされました。会場には、広島市長、京都市長、が来客していました。彼の音楽でこれだけの人が動くのです。
 彼は、やはり天才です。音大に行くことなく、独学で作曲を行い、大きな障害を持っていながらも頭の中に音楽を奏で、楽譜に書くというのですから。
 彼は、眠らせていてはもったいない逸材です。もっと演奏の機会を増やしてほしいですね。
素晴らしい一日でした。