中小旅行業平和憲章草案 その3

KokusaiTourist2011-03-07

 2011年2月24日兵庫県旅行業協同組合第35回総会採択
国際ツーリストビューローも加盟する兵旅協が、中小旅行業平和憲章草案を発表し、旅行業界、観光関連業界、市民への普及活動を進めることを総会で確認しました。何回かに分けてその内容を紹介します。



3.旅の関連業界は…
 「安全・安心」より「低価格・利便性」の流れに‥
①「規制緩和」策の下、「選択肢」の提供で「価格競争」は「野放し状態」
観光関連の施設の安全・安心は旅の大前提です。「安ければいい」「速ければいい」ではその役目を果たしたとは言えません。ただ、シェア拡大のため低価格競争に走り“目先のこと”に目を奪われている感があり、「規制緩和」策の下で、それは「野放し状態」といえます。
行政施策としての、高速道路の土日1,000円や“無料化社会実験”の動きは、国民の間に「安いときに動こう」「安いことは良いことだ」といった「価値観」を広めただけでなく、競合する交通体系にも経営危機、廃業などの大きな影響を与えています。

②宿泊の「超低価格料金」の広がりは和風旅館のあり方を変えないか和風旅館に泊って2食付で〜7,000円といった料金がインターネットなどで拡がっています。仕入値の極端な押さえ込み、人件費の大幅な削減、厳しい労働条件、安全・衛生面の「軽視」などにより、旅行者に十分な満足感をもたらすのかという不安があります。また、伝統的な日本の旅文化の一つである和風旅館のあり方が変わるのではないかとの心配もあります。「アンケート」では、80%が、こうした「超低価格」の広がりを、“あまりよくない(34%)“よくない”(46%)としています。

③空港配置、ハブ空港など基幹交通政策は国が責任あるビジョンを示すべき
空の世界では、JALの「倒産」、関空「経営破綻」、LCC(格安航空会社)の登場ANA参入、乱立地方空港の赤字など、問題が噴出しています。さらに、航空会社の「一方的」な燃油サーチャージの「固定化」や旅行業への送客手数料の削減も問題です。
羽田空港が国際空港として再開港しました。韓国の仁川、シンガポールチャンギ空港などはアジアのハブ空港としてすでに機能しており、成田との一体活用のハブ空港といってもその見通しは厳しいでしょう。利用者の利便性や経済活性化にとって、ハブ空港が必要であるなら、国は早くから明確なビジョンを示す必要があります。これまでの、競争促進、規制緩和施策を見直し、利便性と安さだけでなく、安全こそ第一の柱とし、国民の命と安全を預かる国としての責任あるビジョンが求められます。

④シェア拡大競争は安全・人権の「軽視」を生み、そのツケは利用者に
日本航空の問題も同様です。日航自体の放漫経営だけでなく、空港配置を地方任せにし、ナショナルフラッグとして就航を求めて、さらに規制緩和により路線参入や撤退の自由化をすすめた航空行政にも問題があります。ベテランパイロットやキャビンアテンダント160人の整理解雇を強行するなどの、安全や人権を無視した「再建」が何をもたらすか目をそらす訳にはいきません。
シェア拡大競争に走る航空会社と「規制緩和」をすすめる航空行政は、安全の軽視につながり、事故の危険を増やし、そのツケは利用者が負わされます。

4.観光行政は…
 インバウンド増大より国内需要の喚起策にこそ本腰を!
2008年秋に設置された観光庁は、各種目標数字の設定や、地域集客プラン策定を呼びかけますが、未だ顕著な成果をみるには至っていません。
①インバウンド以外は目標設定時点(2007年)より減少‥!
観光庁の政策目標のトップには、インバウンド(訪日観光客)を2010年に1,000万とする目標(2007年835万人)と、「国際競争力のある魅力ある観光地づくりへの支援」を掲げていますが、世界的な経済不況と円高状況下では、達成はむつかしく、他の目標は設定時点より下回っています。
観光庁の施策や“観光立国”については、「アンケート」では、50.5%が“いい”“まあいい”としていますが、49.5%が「判断できない」や否定的な受け止めとなっています。“机上論より具体策を”、“特定国からの訪日に偏り過ぎ”などの声もありますが、観光庁設置後間もないことで、「アンケート」回答は全体として期待感の表れとみれます。

国内需要に本腰入れて国内の観光振興、地域活性化を!
しかし、2010年11月の国交省成長戦略会議では、訪日外国人3,000万プログラムが提起されています。観光による地域や経済活性化は、不安定な海外需要頼みでなく、国内需要の抜本的な喚起策が求められます。“観光立国”は産業の一つではあればこそ、国内需要の伸張を見すえて、日本の再発見、日本文化を守る、との視点が必要ではないでしょうか。旅館業界からも、「海外からの誘客ばかりでなく、もっと国内の観光振興に力を入れるべきだ」などの意見も出されています。

③旅行業登録の恣意的な条件緩和は‥? 第3種旅行業者による近隣地域募集企画が可能となる規制緩和策によって、地域集客を競う地域の商工会などが旅行業登録を取るケースがあります。「アンケート」に答えた業者では、“いい”との評価しているのはわずか9.3%に過ぎず、緩和策そのものについても、“いい”とする回答が、42%にとどまり、“どちらともいえない”が35.8%にも昇ります。
営業保証金や特別補償責任の制度については、「受注型企画旅行」と「手配旅行」の区分基準があいまいなどの意見があるものの、否定的な意見は14.7%、21%で概ね消費者への責任を受け止める姿勢がうかがえます。ただ、登録更新時の純資産の条件については、「リースを資産に」などの意見もあり、否定的な声が34%にのぼっています。
地方行政では、全体として中小業者の「保護・育成」の視点は弱く、「地元納税者」としての処遇でなく、官公需発注なども大手旅行社よりにシフトしているところが多いようです。