中小旅行業平和憲章草案 その4

KokusaiTourist2011-03-10

 2011年2月24日兵庫県旅行業協同組合第35回総会採択
国際ツーリストビューローも加盟する兵旅協が、中小旅行業平和憲章草案を発表し、旅行業界、観光関連業界、市民への普及活動を進めることを総会で確認しました。何回かに分けてその内容を紹介します。

その1http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20110301
その2http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20110304/p2
その3 http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20110307



4.中小旅行業の現状と役割
1.中小旅行業の規模と役割
構成比は、業者数で98.3%、従業者数で47%、取扱高は25%(推定)
国交省(2007年当時)へ年次報告のあった旅行業者の統計によると、中小旅行業者(従業員数100人未満)の数は6,713で、その比率は、旅行業者全体で98.3%、第2種で99%、第3種では99.7%にものぼります。また全体の92.6%の6,323社が20人未満という小規模になっています。圧倒的多数の小規模な旅行業者と、一方で万を越える従業員の少数の旅行社という二重構造が旅行業界の特徴となっています。
中小旅行業に携わる従業者数は、業界全体の117,000人(2006年)中、半数近い約55,000人と推定されます。また取扱高では、推定で、約2兆円、全体の7兆7千億の4分の1強とみられます。(日本旅行業協会の“数字が語る旅行業2010”の各種データより推定)
業者数で98.3%、従業者数で47%を占める中小旅行業者の取扱高は4分の1強にとどまっています。しかし、この年次報告では、大手旅行社の募集型企画旅行商品などを中小旅行業者が受託販売した場合、その数字は商品造成した大手旅行社の取扱高として計上されてあり、中小旅行業者による消費者との実際の取引高のシェアを正しく反映していません。


地域住民の旅のお世話、旅と業界の健全な発展、雇用・平和に貢献している存在
中小旅行業者は基本的には地域で生活し、地域に密着した“顔の見える営業”をしています。そのことによって、旅行業者としての良心による適度な競争により互いに切磋琢磨している存在です。
その役割の第一は、住民の旅のニーズを充たすことです。第二に、旅と業界を健全に発展させる役割を担っています。そして、全体としては日本の社会経済機構の中で、雇用、平和、安全などで社会的に必要な役割を果たしています。
中小旅行業者は地域で得意先に満足していただくために、価格競争に巻き込まれながらも、ギリギリのところで智恵と工夫で、地域に必要な存在としてあり続けています。こうした地道な努力を業界と社会的な共同の力で地域に持続させていくことが必要ではないでしょうか。

2.中小旅行業の厳しい経営実態
“受注減”、“過当競争”、“利益率減少”の中で様々な自助努力の積み重ね
中小旅行業の営業と経営は年々厳しさを増しています。「アンケート」では、経営上の問題点として、10項目のうち“受注減”、“過当競争”、“利益率減少”のいずれかをトップに挙げた人の合計は、回答者の78.6%に昇っています。その他、上位には、“社員教育”、“添乗員確保”、“後継者”、“信用力”などが続いています。
そんな中で、経営存続のため、営業所の整理・統合、人員の不補充、社員の「非正規化」、役員報酬のカット、従業員給与の削減、歩合制導入、賞与棚上げ、後方業務のIT・合理化等々の打開策を探っています。営業面でも、得意分野の専門特化、同業者とのコラボ、重点得意先の設定、友の会づくり、HP活用・ネット販売、アウトセールス強化、カウンター特化、大手との連携などそれぞれ独自の努力、試行錯誤を続けています。
 
自助努力の限界から、中小企業支援策、税負担軽減の要望も
しかし、自助努力だけでは限界があり、「アンケート」でも政治、行政に対する様々な要望が示されています。最も要望が多く強いのは、“中小企業支援の施策”であり、10項目中トップに挙げた人は32.6%にもなります。税制に対する要望も根強くあり、“不公平是税制の是正”“消費税の負担軽減”をトップにあげた人はあわせて23.9%に昇っています。また、“中小の協同組合への助成”や“登録更新時の純資産条件の緩和”も9.8%、7.6%の人が一番望んでいる結果がでています。 


3.中小旅行業の共同の現状
大手旅行社の熾烈なシェア競争の中でも、中小の旅行業者は各地で自主的に組織をつくり、業界の良心と社会的責任にもとづく先駆的な活動を続けてきました。

着地型企画”にも中小旅行業の団体が先駆的に取り組み
95年の阪神淡路大震災からの復興をめざす「地元誘客プラン」に端を発したともいえる着地型企画は、全国に先駆けて関西で設立された協同組合や九州の中小業者の間で議論と試行がすすんでいました。2002年には、21世紀旅行業の業態モデルの一つとして、全国的交流も行われました。その力は行政を動かし、今日では、観光庁が全国に積極的な取り組みを呼びかけ、大手旅行社も独自のスタイルで着地型を打ち出すに至っています。

支払保証の「クーポン制度」の実現や行政との交渉、観光問題での意見表明なども
信用力の乏しい中小旅行業者の信用補完をするクーポン制度は、70年代半ばに関西など各地で生まれ、やがて全国規模のクーポンシステムの誕生をみることになりました。
ほかにも、旅行業法改訂問題での意見書提出、修学旅行問題の地元中小業者への発注要請、協同組合による1種登録取得などなど活動を積み重ねてきています。これらは、中小旅行業者全体の共同の成果であり、持続的発展の方向を示すものといえるでしょう。また、利用者の立場に立って旅の環境、業界の健全な発展を考える資格と力が、中小旅行業者とその団体にあることを証明しています。
 しかし経済危機の下で求められる共同の拡がりや活動の中身はまだまだ不十分です。さらに中小業者のいっそうの団結を広げ、それらを阻害する要因を見きわめ困難打開の展望を示していくことも必要です。