民法協MLから転載

震災を理由として、派遣労働者が自宅待機や休業を命じられたり、派遣切りされたりという相談が急増しているようです。 自宅待機を命じておきながら、休業手当すら支払わないという派遣会社があるようですが、明らかに違法です。
 私見では、操業停止などの派遣先の都合で自宅待機になった場合であっても、
派遣労働者は100%賃金を請求できるものと考えます。
 これに対し、大阪地裁H18.1.6「三都企画建設事件」(労判913-49)は、派遣先から派遣労働者の差し換え要求があって労働者が就労できなくなった場合について、派遣会社は6割の休業手当だけ支払えばよいとしています。
(山田陽三裁判官です)
 しかし、この裁判例に対しては、学説はこぞって批判しており、多くの学説は、民法536条2項により100%賃金請求できると考えるべきだとしています。
 天変地異によって派遣先が操業できなくなったとしても、派遣元は他の事業場に派遣するべき義務があると解すべきです。労働者派遣事業者(=派遣元)というものはまさにそれを業としているわけですから、派遣労働者を雇用しておきながら派遣先を見つけることができないというのは、労働者派遣事業者(=派遣元)の故意・過失による休業にあたると解するべきであって、派遣労働者民法536条2項により100%の賃金を請求することができると考えるべきだと思います。(昭61.6.6 基発333号)
 「派遣中の労働者の休業手当について、 労働基準法第26条の使用者の責に帰すべき事由があるかどうかの判断は、派遣元の使用者についてなされる。したがって、派遣先の事業場が、天変地変等の不可抗力によって操業できないために、派遣されている労働者を当該派遣先の事業場で就業させることができない場合であっても、それが使用者の責に帰すべき事由に該当しないこととは必ずしもいえず、派遣元の使用者について当該労働者を他の事業場に派遣する可能性等を含めて判断し、その責に帰すべき事由に該当しないかどうかを判断することになること。」

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