現地レポート:南アフリカ2、

KokusaiTourist2011-06-25

定番ツアーの魅力を増強する新素材WEB版業界紙トラベルビジョンより転載

世界史を塗り替えた激動の地マンデラ氏の軌跡を辿るロベン島
 今回の視察で印象的だったのが、南アフリカが自分たちの手で民主主義を勝ち取ったという自負を持つ、熱い国だということ。そんな人々が誇りとともに話題にしていた人物が、人種差別と闘い、ついに大統領となってアパルトヘイトを撤廃したネルソン・マンデラ氏だ。マンデラ氏を描いた映画『マンデラの名もなき看守』(2007年)や『インビクタス/負けざる者たち』(2009年)が公開された影響もあり、旅行会社でもゆかりの場所を訪ねたいとの問い合わせを受けるという。
 ケープタウン沖のロベン島には、マンデラ氏が27年間収容されていた刑務所がある。人種差別の反対者が、政治犯として捉えられていた場所だ。今では島全体が博物館となり、広島の原爆ドームと同様、悲劇を二度と繰り返さないための「負の遺産」として世界遺産に登録されている。
 ロベン島博物館主催のツアーに参加すると、当時政治囚だった人々の案内のもと、島をバスで見学することができる。島内では原則として旅行会社独自のツアーや通訳ガイドは規制されているが、それは案内人の気持ちのこもった説明に耳を傾けてもらい、表情や雰囲気から直接「感じること」を何より大事にしているからだという。見学に集中するためには、あらかじめ島の概要を知っておくと役立つだろう。

 通常は他の見学者とともに最大200人で巡るが、追加料金で2人から54人のプライベートツアーのアレンジも可能で、その場合は通訳の同行も相談できる。所要時間は、船での往復を入れて約4時間。視察参加者によると、「歴史に関心がある旅行者からはロベン島訪問の要望が強い」一方、限られた日程では時間を取りがたいのも事実だ。オプションの設定などで対応したい。
大満足のバルーンサファリはMICEにも
治安状況は「団体客の被害ほとんどなし」

 南アフリカ旅行でサファリは人気の高い旅行目的の一つだが、今回の視察のハイライトとなったのが、気球に乗って上空から動物を探す「バルーンサファリ」だ。バルーンサファリはケニアが知られているが、南アフリカ各地にもサバンナやワイン畑を眺められるコースがある。今回はヨハネスブルグプレトリアから車でアクセスできるピーランスバーグ国立公園でバルーンサファリを楽しんだ。運営するエアトラック・アドベンチャーズは、これまで一度も事故はないという。

 バルーンサファリは、ハネムーンやインセンティブツアーにも最適だ。天候によって実施が左右されるため、当日までのサプライズにすると、可能だった時の喜びは格別。早朝の出発のため、最初はまだ目が覚めていないような参加者も経験するとその素晴らしさに一様に興奮状態となった。ピーランスバーグ国立公園には、欧米のMICE受け入れ実績も多いという一大リゾート、サンシティが隣接し、受け入れ施設も整っている。その中の「ザ・パレス・オブ・ロストシティ」は、おとぎ話のような装飾を凝らしたホテルで、特別な旅にふさわしい豪華さだ。

 治安に関しては、リゾート内はもとより、その他の観光地でも不安は感じられなかった。現地オペレーターのユア・アフリカに勤めるヨハネスブルグ在住の鈴木崇行氏は、「他の外国と同様に、一部の危険な場所を避け、夜は出歩かないといった基本を守れば問題ない」と語る。外務省の海外安全情報でも「団体旅行客の犯罪被害はほとんど発生していない」と記載がある。道路が整い、観光バスによるツアー催行はスムーズ。公共交通が不便で個人旅行が難しい分、旅行会社が手掛ける意義は大きい。