被災者の立場に立った救援・復興策を!

−16年前の被災地の旅行業界からのアピールⅢと要望−
神戸新聞が7月8日夕刊に掲載
http://www.kobe-np.co.jp/news/keizai/0004251401.shtml
http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20110708
兵庫県知事 井戸 敏三 様

2011年7月  日
(社)全国旅行業協会兵庫県支部
支部長 児島 武
兵庫県旅行業協同組合
理事長 菅原 博美
100日を過ぎた今も被災地は、「阪神淡路の時の2週間後と変わらない」ともいわれています。その遅れの原因は、未曾有の大規模地震、巨大津波に加え、深刻な原発事故、さらには被災者不在の「政争」にあるのでしょう。
原発事故についての私たちの認識は日々すすみ、怒りと不安は日々沸点に高まっています。原発事故の直接当事者、東京電力は、自らの責任を未だ十分には明らかにせず、事故情報の全面開示、「収束」への全力投球と補償への真摯な態度を取っているとはいえません。
政治は、被災地や国民の気持ちを逆なでするかの如く、無為な政争に明け暮れています。確かに、現政権はリーダーシップもなく危機管理能力にも欠けるとも言えます。一方、「内閣不信任」をいう「野党」にしても、「原子力立国政策」を推進すべく、「安全神話」を作り上げてきた自らの責任には触れません。いずれも、被災者・国民の思いから遠く離れていると言わざるをえません。
 私たち兵庫県内の中小旅行業者にも、震災の影響は大きく、5月下旬に実施したアンケートの結果によると、震災後2ヶ月間で、2001件、6億9000万(扱額、回答社58社=県内中小旅行者の約3分の1)の受注済みの旅行の“キャンセル”が発生しました。また、その後の受注も半数以上(53.8%)が対前年比から大きく減少し、「多少減少」を加えると減少している旅行者が8割以上にのぼります。旅行需要の動向予測では、「今夏を含め早期回復」と「年内も含め回復は当分無理」との見方が、47.7%、52.3%とほぼ拮抗しています。そして需要回復の条件として、「復興への国をあげての全力投球」「原発政策の転換」の声が圧倒的多数となっています。
私たちは、4月22日の「アピール2」で次のように指摘しました。「原発の危険性を指摘する多くの声に耳を貸さず、事故直後に必要な初期動作をためらったことなど、“人災”を認めることによってしか、事態の収束に必要な科学的叡知の結集をはかり、また、そうしなければ、誠意ある補償に踏み出すことはできないのではないでしょうか。」
すでにレベル7のチェルノブイリを上回る史上最悪の事故、全世界が注目し地球的規模の環境問題にすでになっています。脱原発を明確にする国や自治体も増えています。「安全神話」に基づく原発依存のエネルギー政策からの転換の議論を国民的規模で始める必要もあるのではないでしょうか。
 これだけ大規模な原発地震津波被災が全国に、全産業に重大な影響を及ぼさないはずはありません。震災直前の日本の社会・経済は、すでに“閉塞感”充満の状況でした。そんな時の大震災で、被災地はもちろん、日本全体の経済がさらに急失速してしまいました。被災者救援・被災地復興と国民、中小企業本位の日本経済活性化は車の両輪です。まさに、“国難”ともいうべきこの時期、私たちは、被災者の立場に立った救援・復興、国民と中小企業を守る施策、さらには“制御不能原発”に依存するエネルギー政策の転換が求められているのではないでしょうか。それこそが、安全な旅・観光の活性化、私たち旅行業界の復興、再生にもつながると確信します。

私たちの要望 
史上最悪といわれる東日本大震災のもと、知事におかれましては、16年前の経験を糧に日夜奮闘されていらっしゃることに敬意を表します。
東日本大震災の影響は、日本経済全体に大きな打撃を与えました。とりわけ16年前の阪神淡路大震災で壊滅的な被害を受けた神戸市をはじめ兵庫県では、その傷跡が未だ尾を引いいています。私たち旅行業界は、現下の状況に鑑み次の点でさらに施策を充実され関係部局へご指示いただくとともに国へさらなる要請をしていただくよう要望します。

1.震災後すでに金融施策が実施されていますが、金利の引き下げ、期間の延長、保証料の引下げ、保証協会の100%保証の方向で、いっそうの充実を図ってください。

2.震災以前から、勤労者や高齢者の収入の減少とともに、長期低減傾向(宿泊旅行の消費金額15年で25%減)の旅行需要が震災で見通しがさらに厳しくなりました。需要回復のため、勤労者の収入が増え、中小企業の経営が活性化する具体的な政策を求めます。

3.私たちは、兵庫県に本社を置く中小企業の団体です。兵庫県および外郭団体がかかわる旅行需要は、見積の機会均等を図るに止まらず、中小企業の活性化こそが県の財政に寄与することや、地場産業育成の観点も踏まえ中小旅行業者やその団体に優先的に発注されるよう要望します。

4.阪神淡路大震災に比べ、救援・復旧が遅れている東日本大震災。未だ「救援」すらままならぬ状況での上からの「復興」押し付けでなく、国が被災者の立場にたって救援・復旧に全力をあげるなかから生まれる「復興策」を提起されるよう、16年前の「被災県」として特別の力を発揮してください。

5.原発被災は、日に日に悪化してるかの如くです。3か月の経過は制御不可能を証明したようです。「安全神話」の崩壊です。にもかかわらず「安全宣言」を発した国の姿勢は理解できません。県知事におかれましては、原発依存のエネルギー政策から自然エネルギーへの本格的転換に積極性を発揮されるよう望みます。  
以上

上記要望について、ご回答を文書にていただけますようお願い致します。

  返信先:兵庫県旅行業協同組合
      650-0011 神戸市中央区下山手通り5-12-7
       電話 078-351-2966 FAX 078-351-2256