みちのく・出羽紀行 その2(T.MATSUOKA)

 鶴岡からは、山形自動車道蔵王に向かい、左手には、天気がよければ、奥に鳥海山、手前に羽黒山湯殿山、月山がつらなる絶好の山岳ドライブなのに、あいにくの曇天でした。山形に近づくにつれ、雨が降り出し、蔵王温泉蔵王山形県側)到着も雨の中。
 温泉・スキー宿の『森のホテル ヴァルトベルク』は、奥まった高台にありこじんまりしてるが、もてなしは作並の有名旅館とは大違い。家庭的な「サービス」で旅のこころを癒してくれる。夏場と風評被害のためか宿泊客は決して多いとはいえなく、経営的には大変だろうけれど、客に与える印象はこうも違うものか。
 翌日も朝から雨。せっかくここまで来たし、高い所はひょっとして見えるかなと蔵王の刈田岳山頂のお釜に向かう。しかし、いくら走っても前後左右、霧で真っ白、さすがに危険!を感じUターン。再び山形県側に下りて上山温泉と通り米沢に向かう。米沢は“関ヶ原後”、上杉家が会津120万石から30万石に減削移封された城下町。駅も町全体も上杉の“毘”があふれる
 米沢からは東に向い磐梯吾妻スカイラインへ。天気だと、左手に福島の町が遠望できる文字通りの“スカイラインなのに、やはり小雨と深い霧。車もまばらな頂上の浄土平からミニ登山ができる吾妻小富士はうっすらかすむ。午後、裏磐梯高原に向かう途中から、天気も良くなり、小野川湖、秋元湖などの眺望をレイクラインから楽しみつつ、裏磐梯高原に早めに到着。やはり人出は少ない。五色沼桧原湖、高原のたたずまいは最高!なのに。
 ホテルからは、磐梯山の爆裂口で裂けた頂上が眼の前に。茶褐色の威容が高原の緑と湖の青とほどよくコントラストし、急速な秋の訪れを予感させてくれる
 最終日、猪苗代湖会津富士とも呼ばれる磐梯山の表の顔とを交互にみながら、城下町会津に下りる。ここも戦国、幕末に歴史の変遷、転換を刻んだ町鶴ヶ城を中心に広いゆったりとした感じの町並み。最後の昼食は、ひょんなことから、会津に代々伝わる名物 輪箱飯(わっぱめし)を食することに。奥会津檜枝岐(ひのえまた)で山人の弁当の器として用いられてきた「曲げわっぱ」に、会津の食材を生かした料理を盛り込んだ「輪箱飯」。また、食した場所が、鎌倉時代から続く会津西街道(下野街道)の旧家を移転した絲澤舊陣屋(いとざわきゅうじんや)です。まさに激動の歴史街道を彷彿とさせる風情豊かなものでした。
 最終行程の猪苗代湖畔で小休止し、福島空港に無事にたどり着きました。4県を駆け巡る急ぎ足の旅でした。消化不良の感も否めませんが、自然がいっぱいで、歴史探索も出来る、こんな素晴らしい出羽地方、みちのくが、震災、津波原発のため、人々の足が遠のいているのは残念でなりません。政府と東電が、本当に被災者の立場に立って、何をさておいても全力で復旧・復興をすすめることが求められています。16年前の経験をもち、旅行業界に身をおく私たちももっと積極的に応援を続けたいものです。