フェイスブック問題が波紋 じゃらんに宿泊業界反発

旅行予約サイト「じゃらんnet」を運営するリクルートが同サイトに加盟する旅館ホテルのフェイスブック(FB)ページを開設した。同社が旅館ホテルと結ぶ契約条項をたてに、施設の公式FBとして一方的に7月1日に公開したところ宿泊団体が反発、対応を急ぐ一方、業界にとどまらず一般メディアも大きく報道し波紋が広がっている
リクルートが6月30日付けで加盟施設約2万軒に対し「翌7月1日以降にじゃらんnetへ自動的に掲載する」とファクスで通知。契約旅館は「個々で築いた旅館のブランドに対してフェイスブックへ契約旅館の公式代理人を名乗り、勝手に公式ページをつくるとはどういう考えなのか」と反発したことで、騒ぎになった。
じゃらん、経緯説明しお詫びも、今後は―?
国際観光旅館連盟近畿支部IT戦略部会(朝野泰昌部会長=朝野家)は7月25日、大阪市中央区の大阪料理会館で「IT戦略部会」を開き、リクルートカスタマーアクションフォームカンパニー担当者と今回のフェイスブックに関する質疑を交わした。
リクルート側からは旅行ディビジョン営業2部の唐沢直芳部長、同部の酒井宏明・兵庫グループマネージャー、旅行ディビジョン事業推進部事業推進グループの瀬戸山雅之さん、ネットビジネス推進室プロダクトマネジメントグループの秋山純じゃらんnet編集長が出席。
席上、唐沢部長は「今回の一連のフェイスブックについての対応は性急で、きちんとした説明もせずに進めてしまったことをお詫びしたい」と語り、じゃらんnetが作成した近畿支部会員198軒のフェイスブックすべてを7月22日付けで削除したことを報告。
しかし「今後、我々に無断で今回のようなことはしないのか」という質問には「今後検討し、皆さんにご納得していただける努力はするが、約束はできない」と返答した。
すでに、じゃらんnetでは同じSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の「mixi」でも同様の準備を進めており、この分野での拡充路線をとっている。
リクルートが今回のような動きに出たのは旅館の「公式フェイスブックページ」を訪れた見込み客をすべてじゃらんnetに誘導することで、じゃらんnet自体の評価が上がり、検索システムで検索した場合、他の予約サイトや旅館ホテル側の公式ホームページより上位表示になり、有利な立場を保持できるからだといわれている。
こういった一方的な手法をとった背景に、リクルートが旅館ホテルと交わしている契約約款21条があることも問題視されはじめた。
不平等な?契約条項21条は「じゃらん内に存在するすべてのデータをほぼ無条件に第三者に対して提供できる」「情報の提供に際し施設に事前通告する必要も一切ない」といった事前通告なしで外部サイトに対して自由自在に利用・流用・加工できてしまう条項であることがわかったからだ。
実際じゃらんnetが昨年12月、一方的に送客手数料の値上げに踏み切ったことに対して、宿泊業界は一斉に反発の狼煙を上げたが21条に阻まれた経緯がある。
全国旅館ホテル衛生同業組合連合会(全旅連)は「契約時に21条でこういう解釈ができるとは思っていなかった。このままでは消費者に誤認を与えることもある」との見解で、不正競争防止法に抵触する可能性もあるとして、21条の訂正を要望する内容証明を近日中にリクルートへ送付する。また、他のネットエージェントに関しても監視を強める方針だ。
国観連はページ削除を要請
国観連近畿支部に次いで、7月末には滋賀県旅館ホテル生活衛生同業組合加盟旅館も会員旅館の掲載削除をじゃらんnetに求めた。
国観連本部も各支部単位で今回のフェイスブック問題に対しての説明文を送り、ほぼすべての会員旅館から了解を得て、契約のある会員旅館のページの削除を要請。8月5日に削除された。
日本観光旅館連盟(日観連)も何らかの対応を検討している。こういったリクルートの姿勢に対して共同通信や一般紙などのメディアも取り上げ、この問題はこれからも波紋を広げそうだ。