ドクター安達の海外旅行記パート9 

ドイツ中南部7都市を巡るドイツ環境視察ツァーその3
その1http://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20111011

3日目 2011年10月4日(火)ローテンブルグ ➝クライルスハイム ➝カールスルーエ
  寝過ごして8:20に朝食会場へ、みなさんもうそろっていた。少し表を散策してみるが気温が低すぎて蝶は飛ばない。9:10バスで出発。クライルスハイムへ向かうバスの中での長谷川解説。
 『ゴミ処理の問題。「つまらない梱包はするな」が基本的姿勢。ごみは3種類に分類。①紙類、②生ゴミ、これらの回収は無料。リサイクルできるゴミなので、業者に売って費用を捻出している。③その他、リサイクルできず燃やすしかできないもの。燃やした熱は、発電と温水暖房に使用している。ゴミは32通りに分別回収。ガラスは3種類、プラステイックは5種類、電気製品3〜5種類、アルミ3種類、衣服も3種類、その他鉄板、レンガなど土ものなど。有害物質を含むもの(蛍光灯、ペンキ、バッテリー、ろうそく、てんぷら油)など。
  回収場所(リサイクルホフ)は、2000人に1か所、およそ500m毎に大きなコンテナが置いてある。メーカーはこのようなゴミの無料回収義務があるが、実際は少し徴収しているそうだ。

再生エネルギー開発について。
  波を利用する、海上風力発電、太陽熱など。太陽光発電は、以前はコストが高く、自治体が余剰買い取りや低利融資などの支援を行い普及に力を入れた』、など。
市営エネルギー供給会社クライルスハイムで太陽熱利用の温水供給システムのレクチャーと視察
 ブラウン氏とショップフさんのお話
 世界中から視察に来られます。震災後に日本の専門家が来られ、意見を聞くのを楽しみにしています。
 当社の売上げ高は約5000万€(55億円)で、従業員が145人です。当社は再生可能なエネルギーによるコジェネ発電を大切にしています。一つは20以上のエネルギー効率の良い木製(ペレットのことか?)および熱発電所(ゴミを焼却して得る熱で発電)、もう一つがドイツ最大の太陽熱施設です。これによって、年間55,000トンのCO2を削減しています。これはサッカー場7735個分に木を植えた効果に匹敵します。
ここから20km離れた所に、木材ペレット発電やバイオ関連の施設を持っているとのこと。
  市営公社は、EUの気候変動に対する目標に協力して、2020年までに3つの20という標語を作りました。エネルギー消費:20%削減、CO2放出量:20%削減、再生可能エネルギー比率:20%というものです。Fukushimaの経験から、私たちの目標達成は社会に大きなインパクトを与えると思います。特にフランスに対して私たちは影響を与えたい。
 都市計画のコンセプトは「太陽とともに暮らす」です。ヒルテンヴィーゼン2の住宅建設区域には、小学校と高校を作り、集合住宅と個人住宅に2000人の住民が住みます。バッファタンク(貯水タンク)は、100m3(10万L)の水を貯水でき、例えば夜間の温水短期保存庫の役割を果たします。5つのコンクリートリングを重ね合わせ、水を漏らさないように特殊鋼で覆っています。タンクの中は3気圧で加圧され、最高108℃までの温水を保管することができます。夏の過剰なエネルギーを冬のために保存する特別な熱保存庫を考案しました。地熱パイプを3m間隔で地下55mの深さに設置しました。これによって夏の太陽熱エネルギーを冬に利用できるようになりました。このプロジェクトは連邦政府、州、民間の3者が出資して行われています。1990年に新しいプロジェクトが立ち上げられ、2002年から開始され、2011年11月に完成予定です。
Q:ドイツの再生可能エネルギーの比率は?
A:スライドにあるように、2005年で5.8%、2020年に18%にする計画でしたが、2011年17%を達成しました。(Kさんがつい最近20%を達成したという記事を読んだとコメント)。風力発電を増やして2024年には原発ゼロにする計画です。Fukishima後、ドイツは7基の原発を止めたがエネルギー不足となり、今フランスから電力を購入しています。市民はこの事実をあまり知らないですが。今は過渡期です。将来的には液化ガスに頼る方向で、環境省でもいろいろ議論されています。つい1週間前、環境大臣が視察に来て、2020年までに再生可能エネルギーの比率を38%まですることができる、と言っていました。
Q:輸入電力の割合は?
A:10%以下です。7基稼動中は電力を輸出していました。

 1997年私たちがソーラー発電を始めたとき、周りからは気が狂っていると言われましたが、今大変評価されています。この会社は小さい方です。ドイツには900くらいエネルギー供給会社があり、当社を見習えと言われています。
Q:液化ガスの輸入先は?
A:オランダ、ノルウエー、ロシアなど。今は陸地にパイプラインを引いていますが、将来北海へパイプラインを作りロシアから直接手に入れる計画。
Q:Fukushimaはその後どうなっていますか?
A:報道されていないが、地下に漏れているだろう、そして土壌汚染から拡散の可能性が考えられる。 A
11:00講義の後、防音壁の南側に設置された太陽熱コレクター合計7500haのパネルを見て、防音壁北側にある学校に隣接するバッファタンク施設(温水貯蔵タンクと地熱パイプおよびそのコントロ-ルセンター)を見学する。
ここの太陽熱施設は、クライルスハイム市の「ヒルテンヴィーゼン2」というプロジェクトで、この地域に必要な熱エネルギーの50%を供給し、年間約1000トンの二酸化炭素を節約している。持続的なエネルギー供給へ向けての画期的な第一歩と評価しているようだ。
  この施設についてネットで探してみると、「ヨーロッパにおける再生可能エネルギーおよび放射性廃棄物処理に関する調査 ―第33回電力土木技術海外調査事業報告」という興味深いものがあった。その中にヒルテンヴィーゼンのことが書いてあるので一部抜粋しておく。
ヒルテンヴィーゼンプロジェクトの概要>
 かって米軍基地があったヒルテンヴィーゼン地区において、太陽熱を利用した地域熱供給システムの開発を目的にした、ドイツの省・州・市の合弁建設プロジェクト。季節間の熱需給調整を太陽熱の地中蓄熱により行っていることに大きな特徴がある。
<所感>
冬場の熱エネルギーをいかに効率よく未利用エネルギーから供給するか」という寒冷地の課題を、太陽熱パネル、温水層、ボアホール地中蓄熱(BTES)等、各施設の設定仕様や連携の仕方も絶妙で、無駄なく低コストに成功しているようであり、日本の寒冷地において、非常に参考になるものと思われる。12:40見学を終わり、お土産のTシャツと金閣寺の額付き写真を渡す。これは、市庁舎に貼っておくとブラウン氏。日本からの視察をとても喜んでいる様子だった。
昼食は豚肉のソテー
 13:00どこかのホテルのレストランへ。豚肉のソテーとポテト炒め。

長谷川さんにドイツの市長と市議会の選出方法について訊く。首長は政党で選び、市議は個人に投票とのこと。市議は一人一票ではなく定数分投票する。つまり、定数20人で候補者90人なら、自分の選びたい20人の名前を書く。市議の数は人口によって定数が決まっているそうだ。

カールスルーエに向かう 13:25バスに乗り、200km離れているカールスルーエへ向かう。アウトバーン周辺は延々と続く畑、畑、畑。風力発電の風車も見える。ちょっと車で混んできた。
 16:55カールスルーエに到着。ホテルの前がちょうど路面電車の停留所。路面には芝生が敷いてある。チェックイン後、まだ陽が当たっているのでホテル周囲を散策。ちょうど道路を挟んで向かい側が動物園。その周囲を散策するが蝶影はなし。みなさんはお城やモールへ行ったようだ。 自転車で子どもをつれて出かける時は、チャイルドシートならぬチャイルド荷車を引っ張っている。自転車の荷台に乗せるよりはるかに安全だろう。
レッセン フォト
 今度はホテルの反対側を当ってみる。子ども公園があったので、その遊具で遊んでいる家族連れを含めいくつか写真を撮る。公園を出ようとしたらシスターらしい女性2人がやって来てドイツ語で話しかけてきた。「バールム、キンター、フォート」の単語が聞き取れる。「レッセン フォート」と言っている。英語で答えるが、全くわからないようだ。ドイツ語で 「Ich komme aus Japan. Ich sprache kein Deutcsh.」。 ちょうどやってきた若者にシスターは英語ができるかと尋ね通訳してもらう。しかし、彼もレッセンの英語の単語が思いつかず通じない。パリで子どもの写真は撮ってはいけないと言われたことを思い出し、ああレッセンとは消すという意味だろうと思い浮かび、撮った写真を消して一件落着。あとで辞書をひくとläschen :消すとある。
 後で長谷川さんに聞いたら、子どもや大人でも写真に撮るときは、まず撮ってもいいですかと聞かないといけないそうだ。子どもの誘拐などを予防するためで、黙って撮るとクレームがきても仕方がない、と分かる。
公園にビンの回収箱が置いてあった。ビンは緑、茶色、黒の3種類に分けて分別回収される。

各自夕食はホテルのレストランで
 18:10ホテルに戻り、やっとパソコンに向かい旅行記を書始める。20時前お腹が減ったので外に食べに行こうと思ったが、ホテルの食堂を覗いてみるとKさん夫婦とSさんがいたので入ることにする。Sさんと相席し、牛肉のパスタを頼む。Sさんは10数年の勤務医生活後、父親の医院を継いで開業医になられたとのこと。手の外科が専門で数年前まで手術もしていたそうだ。全国保団連の「戦争と医学」展の取り組みで、731部隊の調査に中国へ行かれたそうである。ジョニ黒を飲まれていたが、なかなか料理が来ないので、サラダ2皿と、ジョニ黒3杯を飲みほしていた。やっと来た牛のステーキをそれでも軽々と平らげる。Kさんは大盛りのマカロニパスタは食べきれなかったようだ。

夜はテレビでドイツ語の聞き取りの練習
 21:30自室に戻るが、パソコンを打つ気力がなくテレビを眺める。たくさんチャンネルがあるが、ニュース番組ではBBCとCNNが放映されていた。政治や経済の討論番組、スポーツチャンネル、ドラマ、子ども番組などがあり、古い映画のスタートレックをやっていた。聞いているとドイツ語も耳に慣れてくる。意味は分からないが発音は少し聞き取れるようになり、シャドーイングの練習をする。アダルトなチャンネルが一つあったが、電話番号を連呼するので、数字の聞き取りの練習になった。