[米国防長官来日]泥沼化させるつもりか

沖縄タイムズ社説2011年10月26日

 来日したパネッタ米国防長官は野田佳彦首相、玄葉光一郎外相、一川保夫防衛相と相次いで会談した。
 玄葉氏、一川氏は辺野古を埋め立てるための環境影響評価(アセスメント)の最終手続きとなる「環境影響評価書」を年内に県に提出する方針を伝えた。野田首相オバマ大統領から圧力を受けた結果だ。パネッタ氏もアセスの「前進を促したい」と求めていた。
 仲井真弘多知事はじめ、沖縄が明確に反対する中での日米両政府による辺野古移設推進の確認である。露骨な県民無視であり、到底受け入れることはできない
 沖縄本島には米軍飛行場が二つもある。宜野湾市普天間飛行場、中部3市町にまたがって嘉手納基地が居座る。普天間は約2800メートルの滑走路が1本、嘉手納は4000メートル級の滑走路が2本ある。
 在日米軍の飛行場は本土に横田(東京)、厚木(神奈川)、三沢(青森)、岩国(山口)があるが、二つも抱えている自治体は沖縄のほかにどこにもない。
 飛行場を減らすのならまだしも、辺野古への移設が「在沖米軍の影響を低減させる」(パネッタ氏)、「最も大きな軽減策」(一川氏)というからあきれ返る。沖縄の実情を知らない者の言葉である
普天間の代わりに辺野古に、機能強化した最新の飛行場が建設されるのである。約1800メートルの滑走路が2本のV字形である。どこが負担軽減なのかとても納得できない
 しかも安全上の問題をはらむMV22オスプレイが配備されるのだ。
 普天間、嘉手納の実態を見るまでもなく、米軍飛行場は国内法の制約をほとんど受けず、日米合意した騒音防止協定も守られていない。民間地上空を飛行し、爆音をまき散らす。通告なしに外来機が頻繁に飛来し、爆音は激化するばかり。住民が司法に訴えても「第三者行為論」を持ち出して、飛行の差し止めは実現しない。司法は逃げ、米軍には口を出さない姿勢だ。
 パネッタ氏は米軍兵士らを前に日米同盟の重要性を強調し、「今後、50年も同じように変わることはないだろう」と述べた。沖縄をさらに基地に縛る考えと受け止めざるを得ない。沖縄戦終結から数えると優に100年を越える。沖縄を半永久的に軍事要塞(ようさい)化するつもりであると言っているのに等しい。日本本土に基地を分散させることは何ら考慮しない。とても容認するわけにはいかない。
 鳩山由紀夫元首相が主張した「少なくとも県外」が失敗し、政権を投げ出した「鳩山トラウマ」が民主党には残っている。米国の虎の尾を踏んだとの思いが強く、菅直人前首相は何もせず、野田首相は米側の圧力を受け、辺野古移設を進める考えだ。
 なぜ沖縄か。海兵隊が沖縄でなければならない特段の理由はないというのは、もはや常識である。
 米軍基地を沖縄に閉じ込めておけばいいという考えはおかしい。思考停止は戦後ずっと続いている。国会議員も国民も対米関係を真正面から問い直す気概を見せてほしい