安保閣僚会談 普天間で「偽装」許されぬ

琉球新報社説2011年10月26日

 民主国家の姿からは程遠い玄葉光一郎外相と一川保夫防衛相が25日、パネッタ米国防長官と個別に会談し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の日米合意に沿い、環境影響評価(アセスメント)の「評価書」を年内に提出する日本政府の方針を伝えた。
 早い話、日米合意を改めないという宣言だ。多くの県民の目には「日米同盟」のためなら手段を選ばぬ「強権国家」としか映らないだろう。失望を禁じ得ない。
 パネッタ氏は日本側の方針を歓迎したが無責任だ。会談に臨む前に県民の声を直接聞くべきだった
 沖縄では日米合意の実現は不可能で直ちに撤回されるべきだというのが、大多数の民意だ。こうした見方は米議会や米国の安全保障専門家などにも広がり、辺野古移設案は事実上、破綻している。
 担当閣僚の会談を前に、野田佳彦首相を引っ張り出し“決意”を演出する日本側も問題だ。民意が支持しない政策を強行すれば、日米関係に汚点を残す。野田首相には、こうした自覚を求めたい。
 「日米同盟重視」の歴代政権や国会議員は過去15年、官僚に操られるまま、憲法を頂点とする法体系を曲げてまで普天間問題など基地負担を沖縄に押し付けてきた
 例えば、1997年の米軍用地特措法改定では、国が円滑に米軍用地強制使用手続きを進める上で不都合となった地方自治体の関与を剥奪した。2007年には米軍再編推進法を制定し、米軍再編への協力度合いに応じて自治体への交付金を加減する“アメとムチ”の手法を導入した。
 09年には在沖米海兵隊移転費の日本側負担に拘束力を持たせたグアム移転協定を締結。これは政権交代が現実味を帯びていた衆院選を前に、時の政権の合意にすぎない米軍再編に法的拘束力を持たせ、将来にわたり政権の政策決定の手足を縛る事が狙いだとされた。
 こうした安保政策のゆがみを正すのが政治家の見識であり、政治主導であろう。こう考えると、日米の官僚と一緒になって辺野古案に固執する閣僚や政治家の姿は嘆かわしい。ましてや「評価書」を提出し、作業進展を装うのは「偽装行為」であり、ばかげている。
 普天間飛行場の危険を一刻も早く除去するため、両政府はいま一度曇りのない目で県外・国外移設や閉鎖・撤去を検討すべきだ。