防衛省処分 問われているのは差別構造

琉球新報社説より
 米軍普天間飛行場の移設問題に絡む環境影響評価書提出に関して、不適切発言をした田中聡前沖縄防衛局長の監督責任などを問われて、一川保夫防衛相に対する問責決議が可決された。前沖縄防衛局長にも停職40日の懲戒処分が決まった。
 この問題の関係者が処分され、問責決議を受けたが、根本は何も変わらない問われているのは大臣、官僚の責任であると同時に、組織としての沖縄への向き合い方である。
 前沖縄防衛局長の発言は、琉球処分以来の沖縄に対する差別構造が無意識に出たとみていい。戦後70年近くたっても米軍基地を強要されている現実をまるで人ごとのように語っていた。
 民意が拒否しているにもかかわらず、米軍基地を押し付ける。国は全国どこであろうと、自治体や大多数の民意が異を唱えれば、力ずくで押さえ込むのだろうか。沖縄だけではないか。
 不適切発言に対して、政府の対応は早かった。その日のうちに局長を更迭した。官僚側に懐疑的な見方もある中で、オフレコ発言に処分を下したのも、発言を大きな問題になると捉えた証左だろう。
 その一方で、環境影響評価書の年内提出は堅持する。野田佳彦首相は問責決議を受けた一川防衛相に職務を続けさせる考えだ。不適切発言の監督責任を問われた防衛相が、発言のきっかけとなった環境影響評価書の年内提出をするというのか。言語道断だ。
 政府が問題としたのは、不適切発言より、その発言が移設問題に及ぼす影響ではないのか。沖縄に対し「誠実な努力を積み重ねる」との首相の言葉が空疎に聞こえる。
 この問題を政争の具にする野党の姿勢にも疑問が残る。
 問責決議は「前沖縄防衛局長が女性の尊厳を踏みにじる発言をした。監督責任のある防衛相が職を辞して責任を取るべきだ」とする。残念ながら、沖縄への差別構造を問う姿勢が見えない。沖縄に真摯(しんし)に向き合っているとは言い難い。
 問責決議案を可決しても、沖縄にとっては何の解決にもならない。辞任しても、新しい防衛相が従来方針を押し付けるだけだ
 問責決議、停職処分で幕引きは許されない。この問題で政治に問われるのは、沖縄にも民主主義を適用することだ。野田政権は、民意が拒否することを強要する自らの不明、非民主性を自覚してもいいころだ