2011年回顧 命と絆の貴さを痛感/許せぬ暴言、暴走の横行

琉球新報2011年12月31日社説から
 激動の2011年が暮れようとしている。言うまでもなく、ことし最も衝撃を与えた出来事は3月11日の東日本大震災だった。…東京電力福島第1原子力発電所の深刻な放射能漏れは、「原発は絶対安全」と強弁し続けた政府や東電が大地震や大津波の可能性を無視したために起きた人災だ。…
日米官僚の本音出る
 政治に目を転じ、沖縄に対する日米両政府の対応を1文字で表せば「暴」という漢字が思い浮かぶ。
 2月、鳩山由紀夫元首相、…「辺野古しか残らなくなったときに理屈付けしなければならず『抑止力』という言葉を使った。方便と言われれば方便だった」と。
 3月、米国のケビン・メア国務省日本部長(当時)…日本人は合意重視の和の文化を「ゆすりの手段に使う」「沖縄はごまかしの名人で怠惰」などと述べていた。
11月には、田中聡沖縄防衛局長(当時)が、「犯す前に犯しますよと言いますか」と性的暴行に例えた発言をした。…単なる舌禍ではない。安全保障政策に携わる日米高級官僚の本音がメア、田中両氏の口を借りて飛び出したと見ていい。共通しているのは徹頭徹尾、県民を蔑視する姿勢だ。
偽りのない政治を
 沖縄防衛局は、県内移設に反対し座り込みをする人たちが手薄になったタイミングを狙って環境影響評価書を28日未明、県庁に運び入れた。その手法は夜盗さながらだ。国民のために働く公僕の行為とは思えない。恥ずべき暴挙だ。
 農業団体などが強く反対する中、貿易やサービスの自由化を図る環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を野田佳彦首相が表明したことも暴走以外の何物でもない。民主党は09年の衆院選で「消費税は現行税率を維持する」と主張したが、いつの間にか15年度までに10%に引き上げる方針を打ち出した。国民を裏切る公約違反であることは明らかだ。
 政治家と官僚が詐欺師に身を落とし、結託したのでは国の行く末は危うい。…
 政治家や官僚は、芸術家のように人々の心を豊かにする手腕、スポーツ選手のように正々堂々と課題に向き合う胆力を身に付けてほしい。来年を、うそ、偽りのない政治に踏み出す元年としたい。