消費税10%で営業と生活はどうなる?

全国商工新聞1月16日付けより
消費税・社会保障Q&A
Q1 消費税10%になると経営と暮らしはどうなるの?
 年収250万円未満でも12万円の負担増。勤労世帯の年収250万円未満で年間11万7565円の負担増になります(表1)。消費税5%増税で13・5兆円が国民の懐から奪われます。東日本大震災の復興財源として国民には所得税、住民税の増税が続きます。所得税の負担増は25年間で8・1兆円に上ります。6月からは個人住民税の扶養控除が廃止・縮小されるなど今後、庶民への負担増は目白押しです(表2)。なんとしても消費税増税は阻止しなければなりません。自民党政権時の97年、橋本内閣が消費税を3%から5%に引き上げるとともに社会保障の改悪を強行しました。 その結果、国民に9兆円もの負担が押し付けられ、景気は一気に悪化し、倒産・廃業が相次ぎました。野田内閣が狙う消費税増税社会保障改悪はそれ以上の深刻な事態を招くことになります。 東日本大震災の被災地で厳しい生活を送る被災者の生活を直撃し、復興への足かせとなることはもとより、地域経済への影響は計り知れません。
Q2 社会保障拡充のため増税が必要では?
 社会保障はよくなるどころか改悪される 野田内閣は、「消費税増税社会保障のため」と言いながら、社会保障の改悪を次つぎに打ち出しています(表3)。年金支給額を3年で2・5%減額し、その後も毎年0・9%削減。現役世代の国民年金保険料は、05年から毎年280円値上げされ、17年には、1万6900円に上がります。 また、医療でも、外来受診に1回100円程度の定額負担の上乗せや、70〜74歳の窓口負担の1割から2割への倍増など改悪を狙っています。 国民健康保険では保険料(税)が高すぎて払えず、無理して払っても窓口負担が高く、病院に行けない事態となっています。保険料(税)高騰の原因は、国保への国庫負担を減らし続けてきたためです。 ところが政府は国保都道府県単位化を決め、国庫負担をさらに削ろうとしています。保険料引き下げのために、早急に負担率45%に戻すべきです。
Q3 国の財政は大変な状況では?
 日本の実質的借金は多くない。国と地方を合わせた債務残高は約1019兆円(09年末)と大変な額です。しかし、実質的には49兆円です(図1)。国には970兆円もの資産があり、国債を消化するための財政力はあります。また、国債の引き受け手は、ほとんどが日本人であり、個人の金融資産は1489兆円に上ります(グラフ1)。財政破綻したギリシャやアルゼンチンが海外からの資金に大きく依存していたのとはまったく違います。 借金の原因は、自民、公明が大企業や大金持ちへの減税を繰り返す一方、軍事費や無駄な公共工事などに税金を注ぎ込んできたからです。 野田内閣は、このつけを国民に押し付けようとしています。しかし、消費税が上げられても、財政再建に使われる保障はありません。この23年間の消費税の累計238兆円に対し、法人税の減収額は223兆円に上ります(グラフ2)。結局、消費税は法人減税の穴埋めに使われたのが実態です。
Q4 財源はどうするの?
 大企業、富裕層に応分の負担を求めるべき図版のダウンロードはこちら 日本も参加する経済協力開発機構OECD)は12月5日、格差是正のために富裕層へ増税すべきと各国政府に提言しています。 フランスやイタリア、スペインなど各国は、時限付きなど条件はあるものの富裕者増税を具体化しています。リーマンショック後の金融危機や、ギリシャ財政問題に端を発するユーロ危機など世界的な景気低迷の中で、低所得者へは減税し、その財源を富裕層に求めるのが世界の流れです(表4)。 ところが、野田内閣は財政危機を理由に、庶民に消費税増税を押し付ける一方で、大企業には法人税を5%減税しています。257兆円ともいわれる内部留保を抱えている大企業に応分の負担を求めるべきです。 財源確保のために真っ先にやるべきことは、法人税引き下げの中止や所得税の累進税率の強化、証券優遇税制の見直しなど、不公平な税制を見直すことです。
 Q5 消費税はみんなが平等に負担する税金では? 
A5 低所得者ほど負担が重くなる不公平で逆進的な税制。消費税は「誰でも5%で、多く消費した人ほど負担が多い」という人もいますが、消費税は収入のない人にもかかります。消費税には低所得者ほど負担が重く、高額所得者ほど所得に占める消費税の割合は低くなる逆進性があります(グラフ3)。税金は能力に応じて負担(応能負担)するのが原則です。政府は逆進性緩和のために低所得者に消費税分を還付する「給付付き税額控除」を導入する議論を進めていますが、国民一人ひとりに番号を付け、管理を強化する共通番号制度の導入を前提としています。また、大企業は下請け企業の工賃をたたく一方で、消費税を1円も税務署に納めず、巨額の還付金を受け取っています。湖東京至税理士の推算では、上位10社だけで年間8698億円に上ります。10年度の還付金の合計は3兆3762億円で、全消費税収のおよそ28%に相当します。消費税が10%になれば、還付金は2倍になります。
営業・生活破壊する不公平税制 増税反対の世論高まる自腹で負担する中小事業者。
日本商工会議所全国商工会連合会全国中小企業団体中央会全国商店街振興組合連合会の4団体の調査(昨年8〜9月実施、回答9388事業者)で、売上高1000万円から1500万円の事業者の6割以上が消費税を転嫁できていない実態が明らかになっています(グラフ4)。 消費税法第5条は「事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある」と定めており、納税義務者は事業者です。売り上げに消費税を転嫁(上乗せ)できない場合でも、課税売上高が1000万円を超える事業者は消費税を納税しなければなりません。消費税を価格に上乗せできれば、自己負担は発生しません。しかし、価格は市場によって決定されるため、長期のデフレに苦しむ日本経済のなかで、市場での競争を勝ち抜こうとすれば、価格を抑えざるを得ず、中小事業者は消費税を上乗せできず自腹で負担するしかありません。また、大企業の下請けとして仕事をしている事業者は、納入時に消費税分の値下げを求められ、経済取引上の力関係によって消費税を上乗せできなくなっています。
公約総崩れの民主党政権
 民主党は「生活が第一」「コンクリートから人へ」をマニフェスト政権公約)に掲げて09年総選挙で政権交代を果たしました。自公政権が強力に推進してきた「構造改革」路線を切り替え、格差社会や税金の無駄遣いの是正が期待されていました。ところが鳩山、菅、野田と総理が代わるたびに公約違反(表5)を積み重ね、民主党内でも異論が噴出。八ツ場ダムの予算化や消費税増税、TPP参加などに抗議して離党者が出るなど政権党の体をなしていません。09年の総選挙の当選者アンケートで民主党議員の94%が「任期中に消費税率は上げない」と回答。国民の信を問わないままの増税は公約違反です。今こそ「公約を守れ」の声を上げるときです。
自公付則104条を忠実に実行。消費税の段階的引き上げをめざす野田内閣。その青写真は、自公政権時代の09年税制改正法付則104条に基づいたものです。 付則104条は、消費税増税に向け「遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、11年度までに必要な法制上の措置を講ずる」としています(表6)。 しかし、民主党は野党時代に同付則に反対しました。野田内閣は、自ら反対してきた付則に沿って何としても増税を強行しようとしており、国民に対する許されない裏切りです。正論調査で反対が過半数超える。
 新聞各紙の世論調査(グラフ5)では反対が5割を超えています(54%「読売」「毎日」、53%「日経」など)。 経済産業省への12年度「税制改正要望」では、日本チェーンストア協会が「さらなる消費の低迷を招く」と消費増税に走る政府の姿勢を批判。日本百貨店協会も「将来不安の解消につながる道筋をつけないまま、具体的な税率ばかり明示した増税論議が先行することに反対する」、全国商工会連合会は「増税分の価格転嫁が困難な中小企業にしわ寄せが行き」「中小企業の資金繰りがさらに厳しくなり、滞納件数の増加を招きかねない」として「安易な消費税率引き上げ等に反対」と意見を寄せています。 全国中小企業団体中央会は11月に開いた全国大会で「個人消費の冷え込みを増幅し、増税分の価格転嫁が困難な下請け企業、小売企業等中心に中小企業の負担を強いる」「引き上げの時期・税率、事務負担等の条件について、中小企業の意見を十分に反映して検討するべきである」と決議しています。 昨年12月には、日本チェーンストア協会など主要流通業界団体と、全国消費者団体連絡会など消費者団体も含め481団体・企業が消費税増税反対を掲げる「国民生活産業・消費者団体連合会」(生団連)を設立しています。国内の主要流通業界団体や中小企業団体との懇談を進め共同を広げれば増税阻止は可能です。全国商工新聞(2012年1月16日付)