復興庁遅すぎる船出 再生の切り札か、「屋上屋」か

被災地地元紙河北新報より
早期復興に向け、施策推進に取り組む宮城復興局の職員=10日午前9時10分ごろ、仙台市青葉区一番町
 再生の切り札か、「屋上屋」に終わるのか。10日発足した復興庁に、出先機関が置かれる岩手、宮城、福島3県の被災地では復興の司令塔役を期待する声と、遅すぎる船出への冷めた声が交錯した。
 津波で中心部の商店街が大きな被害を受けた岩手県釜石市。食料品店と自宅を流され、仮設商店街で営業している丸木宏之さん(60)は「復興が遅れるほど不安が増す。被災者が今、何を一番望んでいるか、現場をよく見て、素早く対応してほしい。将来への安心を感じさせてほしい」と話した。
 迅速な復興を求める声が多く聞かれた半面、震災発生から11カ月後の発足には不満も相次いだ。
 宮城県石巻市仮設住宅団地で自治会長を務める無職山崎信哉さん(75)は「大いに働いてもらいたいが、(発足が)遅すぎた感も否めない」と苦言宮城県が申請し、9日認定された民間投資促進特区を念頭に「復興に必要なのは『金』と『人』。その二つをしっかり呼び込める魅力的な特区にしてほしい」と、特区関係業務も担う役所の奮起を求めた。
 復興局の支所が置かれた宮城県気仙沼市の主婦木村つる子さん(55)は「それで生活が格段に向上するとは思えない。仮設住宅の住民の苦しみに、どこまで寄り添っているのか疑問だ」と、国への不信感を口にする。「官僚が被災地で暮らし、被災者の苦境を肌で感じることで、スピード感のある復興につながるなら、一定の意味があるかもしれないが」と続けた。
 「現場」と「生の声」を重視するよう注文も。仙台市宮城野区仮設住宅団地で暮らす主婦最上恵美さん(43)は「隣の隣の部屋の音が聞こえてくるし、結露もひどい。政府の人は被災地の現状を知らなすぎる。夏や冬など環境が厳しい時に直接、見に来てほしい」と強調。同団地の自治会長庄司和広さん(38)は「市民の声がダイレクトに伝わるようになってほしい」と要望した。
 原発事故に見舞われた福島県の被災者の苦悩は深い。
 浪江町から福島市仮設住宅に避難している会社員川久保年子さん(40)は「除染は信用できず、もう古里には帰らないと決めた。帰還しない人の支援も充実させるべきだ」と指摘。夫の勤務先は警戒区域にあり、今も休業が続く。「働く場所の確保も優先して進めてほしい」と語った。
2012年02月11日土曜日