年金基金廃止 実態解明は十分なのか!

北海道新聞より
厚生労働省はAIJ投資顧問の年金消失事件を受けて、企業年金の一つである厚生年金基金制度を廃止する方針を
決めた。年金基金は、独自の保険料に加えて公的年金である厚生年金の保険料の一部を国から借りて運用している。
廃止としたのは期待通りの運用益が出ず財政状況が厳しく、改善が見込めないためだ。
 廃止するには、個々の基金が国から借りた保険料を返さなければならないが、返済不能基金も出てくるだろう。あまりにも影響が大きい。
 本当に返済が不可能なのか、運用失敗の責任はどこにあったのか。実態解明がまず先だ。穴埋めのために厚生年金本体の保険料を使う案が浮上している。年金加入者には企業年金のない企業に勤める会社員が多い。運用の失敗のツケを回されることに納得できない人もいるのではないか。
年金基金の中には財政が健全な基金があり、廃止に反発しているうえ自民党は存続を主張している。
 厚労省は穴埋めしても年金財政への影響は少ないとしているが、年金基金には含み損があり、不足額がさらに膨らむという見方もある。
 影響が少ないからといって赤字の年金基金が無条件に救済されるのではモラルハザードを招きかねない。
 年金基金をめぐってはバブル以後、運用利回りの悪化や高齢化により、支給に必要な財源が積み立てた保険料を上回る赤字傾向が続いた。
 7月現在、572の基金の半数に当たる286基金で国から借りている保険料が目減りしており、その額は全体で1兆1千億円にも上った 目減りした分は基金の母体企業が穴埋めすることになるが、負担が重く倒産した企業も出ている。
 返済が原因で倒産するのは避けたい。地域の雇用や産業を奪うことになるからだ。
 厚労省は返済金を減額し、連鎖倒産を防ぐ案を検討する考えという。
 基金が保険料の引き上げなど、返済額を確保するために自助努力するのは当然だ。しかし、政府にも基金の財政悪化を放置した責任がある
 経営が悪化し、返済できない企業への負担を減らすのは妥当だろう。 厚労省は今後、社会保障審議会で議論し、来年の通常国会に関連法案提出を目指す。
 廃止されれば年金基金を当てにしていた退職者の老後にも影響する。厚労省確定拠出年金など他の企業年金への移行を進める考えだ。しかし、中小企業が独自に企業年金を設立し、運用するには財源が乏しい。廃止を想定するならば、
厚労省はその後の明確なビジョンも示す必要がある