働くみなさんへのアピール その3


共産党が「働くみなさんへのアピール」として下記のアピールを14日発表しました。

賃上げと安定した雇用の拡大で、暮らしと経済を立て直そう
その2はhttp://d.hatena.ne.jp/KokusaiTourist/20130216

政府が賃上げ目標をもち、それを実現する政策を実行する――「企業まかせ」でなく、政治の責任を果たすときです。


(図)(グラフ 4)

 国民の暮らしと、その最大の基盤である雇用を守ることは、政治のもっとも基本的な仕事であり責任です。ところが安倍内閣には、自公政権時代に自らがすすめた労働法制の規制緩和、非正規雇用の拡大など、働く人の所得を減らし続けた経済政策の分析も、反省もありません。

 安倍内閣には、物価を2%上げるというインフレ目標はあっても、賃上げ目標はありません。「企業の業績が回復すればいずれ賃金は上がる」というだけです。しかし、「失われた20年」と言われる中でも、企業の業績が回復し、史上最高の利益を上げた時期もありましたが、その間も、賃金は下がりました。金融緩和などで一時的に円安や株高が起きても、働く人の所得増に結び付ける努力がなければ、本格的な景気回復に向かうことはできず、「ミニバブル」で泡と消えてしまいます。

 働く人の所得を増やすために何をすべきか――この日本経済が直面している問題に、政治が真正面から取り組まなければ、デフレ不況から抜け出すことはできません。日本共産党は、政府として、賃金を上げる目標をしっかりもち、賃上げ政策をすすめることを求めるものです。

財界の「賃下げ・デフレ不況加速」への間違った行動をただす
 日本経団連は、「定期昇給の延期・凍結」による新しい賃下げを提起し、派遣法や労働時間制度など、労働法制のいっそうの規制緩和を要求しています。「実質的な賃金は上昇している」、物価が下がっているのだから「生活水準が低下しているとの主張は適切ではない」とまで言っています(『2013年版 経営労働政策委員会報告』)。“物価が下がっているから、働く人の所得をもっと下げてもいい”というのでは、デフレ不況促進策です。

 安倍内閣は、国会で「経営者に“収益が上がれば賃上げを要請する”という形で協力していただきたい」(安倍晋三総理)「(賃上げ)できる条件に企業側があることはたしかだ」(麻生太郎副総理)と答弁しました(2月8日衆院予算委員会 日本共産党笠井亮議員の質問)。形式的な「要請」で終わらせるのではなく、財界の賃下げ・デフレ不況への暴走を止め、賃上げを実現するための、実効ある行動をとり続けることを求めます。

政府の責任で、違法・脱法の退職強要・解雇・雇い止めの根絶を
 いくら営利企業であっても、人権を無視し、一生懸命働いてきた人間を邪魔者あつかいし、モノのように「使い捨てる」ことは許されません。政府に、違法・脱法の退職強要や雇い止めを根絶するために、労働行政をはじめあらゆる手だてをつくすことを求めます。

賃上げを促進する政策をすすめる
 ――非正規で働く労働者の賃金と労働条件を改善し、正社員化を促進する

 労働法制の規制緩和で、派遣や契約社員などの非正規雇用を急増させたことが、低賃金社会にした大きな要因です。派遣法の抜本改正をはじめ、非正規雇用への不当な差別や格差をなくし、均等待遇をはかるとともに、非正規から正規雇用への流れをつくることは、「賃下げ」社会を克服するうえで不可欠です。

 ――最低賃金を引き上げる

 全国平均時給749円の最低賃金を、せめて時給1000円以上への引き上げを目指すべきです。そのためには、賃金助成や税・社会保険料の減免など、しっかりとした中小企業への支援が決定的です。最低賃金を引き上げるための中小企業支援は、米国は5年間で8800億円(減税)、フランスは3年間で2兆2800億円(社会保険料の事業主負担分の軽減)ですが、日本は年間約50億円にすぎません。ここにこそ、抜本的予算増をはかるべきです。

 ――中小企業と大企業の公正な取引を実現する

 大企業による単価の買いたたき、一方的な発注中止をやめさせ、大企業と中小企業が公正に商売できるルールを、独占禁止法の強化などによってつくることは、中小企業の経営を安定させ、労働者の賃上げにつながる重要な施策になります。

 ――政府による賃下げ促進策を中止する

 いま政府自身が、賃下げを促進し、デフレ不況を加速させるような政策は絶対にとるべきではありません。公務員賃金の引き下げは、それだけで1兆2000億円ものマイナスの経済効果となりますが、何よりも、民間賃金の引き下げに連動します。また、生活保護基準の切り下げは、最低賃金の抑制・引き下げに連動します。

人間らしい暮らしを保障するルールをつくってこそ、ほんとうに強い経済に
 欧米の経済も大きな危機に直面し、アメリカもEUも低成長で、厳しい状況が続いています。しかし、長期にわたって国民の所得が減り続け、経済が停滞・後退する――こんなことが起きているのは、先進国の中でも日本だけです。

 日本は、働く人の所得(雇用者報酬)とともに、国内総生産(名目GDP)も1997年と比べて約9割に減りましたが、同じ時期に、欧米諸国は、雇用者報酬だけでなく名目GDPも1・3〜1・8倍に伸びています(グラフ 2)。

 アメリカやEUと比べても異常ともいえる日本経済の長期にわたる低迷・後退と国民の所得減少の根底にあるのは、国民の暮らしを守るルールがないか、あっても弱い、「ルールなき資本主義」という問題です。

 例えば、日本には、ヨーロッパ諸国では当たり前となっている解雇規制法がなく、残業時間の上限がないなど長時間労働の規制も弱く、違法・脱法の「退職強要」やサービス残業が横行しています。均等待遇のルールも弱く、正規と非正規、男女間などでの理不尽な差別と格差が広がり、それが低賃金構造となっています。最低賃金も先進国で最低水準で、低賃金労働者を生み出しやすい構造となっています。

人間らしい暮らしと働き方を保障するルールをつくる――「ルールある経済社会」へとすすんでこそ、経済を土台から強いものにしていくことができます。

労働者と国民の連帯の力で、暮らしと経済を立て直す国民的な共同を
 賃上げと安定した雇用の拡大こそ、デフレ不況を打開し、経済も産業も立て直す道です。財界の賃下げ圧力をはねのける大きな国民的な世論と運動、政治を動かす国会内外のたたかいを広げようではありませんか。

 大企業の労働者も中小企業の労働者も、正規も非正規も、民間も公務も、そして、企業や産業の違いものりこえた共同を広げ、誰であれ、どんな企業であっても、“賃下げには怒り、賃上げには共感する”――労働者と国民の連帯の力をつくりだそうではありませんか。

 日本共産党は、働く人の所得を増やすという大きな一致点で、労働組合ナショナルセンターの違いも、政治的立場の違いものりこえ、幅広い国民各層のなかで、対話と共同をすすめることをよびかけるとともに、その先頭にたって奮闘します。