賃金引き上げこそデフレ脱却の“特効薬”

今年の“春闘”で一部大企業で一時金の満額回答が出ていることを、アベノミクス効果としてメディアが連日持ち上げています。しかし、自動車など輸出型大企業や一部電機、スーパーのことです。しかも、正社員だけで特に大企業に多い非正規労働者は対象になっていないし、ベースアップではありません。日本の労働者のごくわずかだけのことで、それが非正規や中小企業に波及していくのはこれからだとの“順番”論調が多い。一部のコメンテーターからは、「内部留保」を取り崩せとの指摘もあるが、ほとんどが最近の円安効果が背景だとされており、「溜め込んだ内部留保の取り崩し」「下がる一方の賃金是正」に切り込むことがデフレ脱却との声はまだまだ。こんな時、国会ではこんなやりとりがされています。こういうことはメディアはほとんど報道しませんので、しんぶん赤旗から引用して掲載します。

笠井議員 「内部留保活用へ本腰の要請を」
麻生副総理 「賃金に回ると経済が活気づく」
(写真)質問する笠井亮議員(左)=8日、衆院予算委
 笠井氏は、2月8日の基本的質疑で「デフレ不況打開のカギは賃上げ」だとして政府が役割を果たすよう求めたことを受けて安倍晋三首相が同月12日、経団連など財界3団体の首脳に報酬引き上げを要請したことから切り出しました。
 笠井議員 総理、経済界の回答はどうだったのか。
 安倍首相 笠井委員のご指摘もあり、政権の意思もあって経済団体に申し入れた。収益が上がっている企業から賃上げ、あるいは一時金について対応していきたいという回答だった。
 笠井氏は、「個々にであっても踏み出したことはいいことだ」と述べつつ、大方は一時金の引き上げにとどまっていること、経団連米倉弘昌会長が「景気回復が本格的になれば、給料、雇用の増大につながる」と述べたことをあげて、「事実上の賃上げゼロ回答ではないか」と指摘。大企業の内部留保のごく一部を取り崩すだけで月1万円の賃上げが可能なことを示して迫りました(別表)。
 笠井議員 賃上げによって内需を活発にすることこそ余剰資金をいかせる道ではないか。労働者にも企業にとっても、国民全体にも、こんなにいいことはない。
 麻生太郎副総理 共産党自民党が一緒になって賃上げを、というのはたぶん歴史始まって以来ではないか。内部留保が賃金に回ると、そこから消費に回る。GDP(国内総生産)に占める個人消費の比率は極めて高い。短期的にも一時金で内部留保が賃金に回ることは日本の経済が活気づくためにも重要な要素の一つだ。
 笠井議員 内部留保のほんの一部を一時金、基本給も含めて賃上げにあてれば日本経済の好循環の突破口になる。だからこそ今、本腰で要請すべきだ。
笠井議員 「非正規の時給引き上げを」
安倍首相 「正規、非正規の関係なく(賃上げを)呼びかけたい」
 「全く光があたっていないのが非正規労働者だ」―。笠井氏はこう述べ、大企業が非正規雇用労働者を増やして内部留保をため込んでいる実態(グラフ)を追及しました。
 10年間で非正規雇用労働者は400万人増え、勤労者の平均給与年額は32万円も減る一方、大企業の内部留保は260兆円へと100兆円も増加しています。
 笠井氏は「これが『賃下げ社会』の大きな原因だ」と述べ、「歴代自民党政権が進めてきた労働法制の規制緩和の結果であり、反省はないのか」と追及。田村憲久厚労相は「(非正規が)景気が悪い時も失業率が欧米のように上がらない緩衝材だったことは確かだ」と述べ、規制緩和への無反省ぶりを示しました。
 笠井氏は、ローソンが一時金を引き上げするものの傘下コンビニ店からは「上がるのは本社社員だけ」との声が寄せられていると紹介。「非正規労働者の時給を100円上げよう」という要求が全国で高まっていると強調しました。
 笠井議員 安倍内閣の賃上げ対策に非正規労働者は入っているのか。
 安倍首相 正規・非正規関係なく、(賃上げの)呼びかけは行っていきたい。
 笠井氏は、政府が賃上げを目指す一方、産業競争力会議では「正社員を解雇しやすく」と規制緩和を議論していると批判。「今こそ非正規労働者の時給も引き上げ、正社員化の流れをつくり、安心して働ける政策を実行すべきだ」と求めました。