戦前回帰を狙う超反動政権と驚くべき「政治の劣化」、「反“知性”」で憲法が重大な危機に!

安倍内閣が、憲法改悪の企みを彼らなりの「反省」から、「まず96条から」として、憲法改正の発議要件を3分の2から2分の1に緩和しようとしています。憲法記念日3日の各紙はいずれもこの問題を取り上げています。
憲法改悪に対して、もはやジャーナリズムとは言えない異常な世論工作を展開している「サンケイ」「読売」を除いて、「朝日」「毎日」「日経」も「権力の歯止めの用をなさない」「一般の法律を憲法と同列に扱うのは『本末転倒』」「『憲法は…国家権力をしばる法規範だ』というのはその通り」と「96条改定先行論」には、明確に反対もしくは慎重な対応を求めています。
また、地方紙は、「憲法の基本原則が…暮らしにどう生かされているかを見つめなおすのが先決」「…姑息に過ぎる」「勝てないから野球のルールを変えようというのは論外」「立憲主義を無視した邪道」「…おかしいのは憲法の規定ではなく首相の認識の方」「立憲主義への無理解」「25条…をしっかり保証していくのが国や政治の役目」「憲法の平和主義 タガを外してはならぬ」などと、世論を反映して厳しい主張を展開しています。
世論調査過半数が反対し、大多数のマスコミが厳しく反対表明しているにもかかわらず、「96条先行」を強行しようとする安倍政権というのは、いったい「法治国家」を担う資格があるのか、「民主政治」の何たるかへの“無知”と言わざるをえない。いや、“無知”でなく、世論への挑戦、“確信犯”ともいうべきか。この強行が、自らの墓穴を掘ることに繋がることを知らしめる必要があります。そのチャンスは、直ちに「今!」であり、来る国政選挙です。
「先進国で憲法改正をしやすくするために改正手続きを変えた国はない」「立憲主義や『法の支配』を知らなさすぎる。『96条』から改正」というのは、改憲への『裏口入学』で、邪道だ」などと指摘する学者の見解も前述の紙面にあります。
「朝日」3日付け意見広告で、田中優子さんは、「『憲法9条を守る』という言い方では、もう通用しないかも知れません。『前文および憲法9条を一言一句変えさせない』という運動になる必要があります。」と指摘しています。

次に各紙の社説を抜粋して紹介します。
「朝日」
…だが、これでは一般の法改正とほぼ同じように発議でき、権力の歯止めの用をなさない戦争放棄をうたった9条改正以上に、憲法の根本的な性格を一変させるおそれがある。私たちが、96条改正に反対するのはそのためである。
「毎日」
 その時の多数派が一時的な勢いで変えてはならない普遍の原理改憲には厳格な要件が必要だ。ゆえに私たちは、96条改正に反対する。…その憲法からチェックを受けるべき一般の法律と憲法を同列に扱うのは、本末転倒と言うべきだろう。
「神戸」
安倍首相が主張するように「憲法を国民の手に取り戻す」のであれば、憲法の基本原則である平和主義や基本的人権の尊重が暮らしにどう生かされているかを見つめ直すことが先決ではないか。
「京都」
…それには議論を尽くし、相当なエネルギーを費やしたはずである。発議要件の緩和は、その最も大事な熟議をないがしろにしかねない。
 また、…昨年の衆院選のように、自民が約4割の得票率で約8割の議席を占めることが起きる。そんな状態で、過半数の賛成だけで改憲の発議ができるようになれば、民意とかけ離れた形での発議になる恐れがある。
「日経」
…忘れてならないのは、改憲手続きをへて条文を改める明文改憲だけでなく、その前の段階で、国家がきちんと機能するよう法改正により対応が可能な立法改革もしっかり進めることだ。…日本維新の会橋下徹共同代表(大阪市長)が「憲法特定の価値を国民に押しつけるものではない。国家権力をしばる法規範だ」というのは、その通りだ。
琉球新報
…その上で「本丸」の9条改変に手を付けようというのだろうが、姑息にすぎる。…「勝てないから野球のルールを変えようというのは論外」(作家 保阪正康氏)だ。…改憲論者として鳴らす小林節・慶応大教授も「立憲主義を無視した邪道だ」と批判…その改変は立憲主義の根本的否定であろう。…憲法はそもそも「硬性」が普通で、他の法律と同じ「軟性」である方がむしろ、ニュージーランドなどごくわずかなのである。
 そもそも国会議員の多数決で選ぶ首相が国会で過半数の賛同を得るのは普通のことだ。…支持率が50%を超える内閣は軒並み改憲できる。国の基本法規がこれほど不安定でよいのか
沖縄タイムス
 …発議要件だけを先に緩和するという手法は、本末転倒と言わざるを得ない。…時々の政権が恣意(しい)的に変更できないよう通常の法律と比べ、高いハードルを課しているのはこのためだ。…改憲派憲法学者の間からも、縛られる権力が都合のいいようにルールを変えるのは邪道だ、と異論が出ている。
北海道新聞
9条をはじめとする憲法の理念を守り、世界に向けて広げていく行動が何にも増して求められる。「立憲主義への無理解」…首相は「国民の6、7割が憲法を変えたいと思っても、3分の1を少し超える議員が反対すれば指一本触れられないのはおかしい」と述べている。しかし、おかしいのは憲法の規定ではなく、首相の認識の方だ。96条は…立憲主義とは、憲法は権力者を縛るための規範であるとの考え方だ。 …日本国憲法が改正されないままなのは、国民の多くが改憲の必要性を認めてこなかったからにすぎない。自らの意に沿う形に憲法を変えたい。96条改正には…首相のそんな思惑が…憲法の根本原理である立憲主義への無理解を示している。 …日本維新の会の綱領は「日本を孤立と軽蔑の対象に貶(おとし)め、絶対平和という非現実的な共同幻想を押し付けた元凶」と非難する。理屈にならない戦後体制批判であり、あからさまな憲法敵視だ。
信濃毎日」
憲法の重さを考えると、96条の緩和には賛成できない。自民党は、日本の憲法が「世界的に見ても、改正しにくい憲法になっている」と説明する。これは違う。各国の憲法に詳しい明治大学法科大学院教授の辻村みよ子さんによると、やり方はさまざまながら、ほとんどの国がハードルを高くしている。日本が飛び抜けて厳しいわけではない。
福島民報
東日本大震災東京電力福島第一原発事故の発生以来、住民の自由や権利が脅かされる状況が依然として続く。25条に掲げられた〈健康で文化的な最低限度の生活〉を、まず回復し、しっかり保証していくのが国や政治の役目ではないか。…発議要件緩和は、…与野党ともに異論や反対がある。…ただ、被災者の苦しみをそっちのけした論議では困る。
 憲法は、…各条に盛り込まれた人権は「公権力が犯してはいけない」項目でもある。… 歴史を振り返れば、国民の自由を奪ったり、権利を無視したりしたのは政治家や役人だった。… 現在、享受している自由や権利は、先人が苦難の末に手にしたことを忘れてはなるまい