憲法が求める『3分の2条項』は5つある!

憲法学者の石川 健治氏は、3日の「朝日」朝刊で、96条先行改定の動きを“戦慄すべき事態”として厳しく批判います。
96条先行改定論は、「いかなる立場の政治家にも要求されるはずの『政治の矩』を、踏み外そうとしている。96条を改正して、国会のハードルを通常の立法と同様の単純多数決に下げてしまおうとしている。これは真に戦慄すべき事態。その主張の背後に見え隠れする、将来の憲法9条改正論に対して、ではない。議論の筋道を追うことを軽視する、その反知性主義に対して、である。」「間接民主制(代表民主制)の論理に立って、憲法改正手続きから国民投票を外すことを主張するならば、その当否は別として、議会政治家として筋が通っている。今回の改憲提案で、直接「民意」に訴えるという名目で、議会側のハードルを下げ、しゃにむに国民投票による単純多数決に丸投げしようとしている。議会政治家としての矜持が問われる。」(憲法学者 石川 健治氏)
その上で、氏は憲法が求めている「3分の2条項」は5つあるとして、次の条項を上げています。
1.議員の資格を争う裁判で、議席を失わせる結論を出す場合。(55条)
2.会議を非公開にする場合。(57条)
3.除名決議をする場合。(58条)
4.衆議院の再議決の場合。(59条)
5.憲法改正の発議をする場合。(96条)
そして、同じ3分の2条項でも、96条だけは別格だとして「1〜4までは、「出席議員」の3分の2で議決できるのに、憲法改正発議だけは、「総議員」の3分の2にハードルを上げている。これが一番重たい問題だから。」と述べています。
96条改正論は、他の4つの条項は放置したまま、憲法改正についてだけ、通常の立法なみの単純多数決にしようという。問題の軽重に照らして、ちぐはぐな提案であるかは明らかです。
この論点も「96条先行改定」論を押し返すために大いに広げていきたいものです。