都市近郊でイルカが泳ぐ! 神戸・須磨海岸、観光活性化へ社会実験

業界紙トラベルニュースより

神戸の海をイルカが泳ぐ!―。神戸市須磨区須磨海岸で6月13日、2頭のバンドウイルカを飼育する社会実験「須磨ドルフィンコーストプロジェクト」が始まった。海岸でのイルカの飼育は全国でも数例あるが、都市近郊となると全国的にも珍しい。地元では「イルカの泳ぐまち・須磨」を前面に、観光の目玉に育て上げたい考えだ。


今回の社会実験は、観光庁の「官民協働した魅力ある観光地の再建・強化事業」に採択され、神戸市立須磨海浜水族園が企画した。「イルカが泳ぐ海」として須磨海岸のイメージアップや観光など地域活性化のほか、イルカの飼育環境の調査などが目的。7月31日までの期間で、観光動向や地元への経済波及効果などを測定し、今後の展開につなげていく。

実験は、須磨海岸東端に防波堤と仕切り網で囲んだ約9600平方メートルの海域で実施。中央に設けた広さ100平方メートルのいけすで、同園のメスのイルカ「ジーナ」「リア」を飼育する。環境に順応すれば指定海域内を自由に遊泳させるという。

13日は、水族園からイルカを移送。トレーニングプールからトラックとボートでいけすまで運んだ。イルカはデリケートだけに終始緊張感に包まれた。いけすに入り、呼吸が確認されると、集まった報道陣からも安どの声が漏れた。2頭のイルカはエサを食べ、ボールで遊ぶなど仲良く気持ちよさそうに泳いでいた。

同園では6月22日―7月30日、モニターツアー「イルカたちと出逢う感動の旅」を設定した。砂浜でイルカの生態について学び、イルカを呼び寄せることもあるとか。さらに水族園でイルカとの触れ合いも盛り込んだ。宿泊は大人1万1300円から、日帰りは同4100円。催行は名鉄観光サービス。また、7月中は毎日2回、無料の環境学習会も開く。


地域の回遊性向上につなげる取り組みも。周辺の飲食店などで使えるクーポンを付けたプロジェクト特製ビーチサンダルを販売。近隣の若宮商店街は「ドルフィンロード」を名乗るなどイルカの泳ぐまち・須磨を地域一体で売り出していく。

同園経営企画室の小林弘嗣さんは「関西には大きな水族館が複数ありますが、須磨はイルカが泳ぐ海というほかにはない魅力を持っています。都市観光のなかでも一風変わった地が須磨。地元と連携して新しいものを生み出して、地元への還元につなげたい」と意気込む。

来年以降については「イルカの飼育環境も含め今回の成果次第」というが、地域内の連携で須磨の着地型商品を売り出す計画も進んでいるという。「夢は大きい」と小林さんは熱く語った。